2023年8月15日付の英エコノミスト誌が、クアッドのイニシアティブである「海洋状況把握(MDA)のためのインド太平洋パートナーシップ(IPMDA:Indo-Pacific Partnership for Maritime Domain Awareness)」の活動――インド太平洋における海洋秩序を守るための監視活動――が進展している様子を描写する記事を掲載している。
2022年5月のクアッド(日米豪印)首脳会合で合意されたIPMDAの活動は、中国の軍事的・経済的威圧に対して「自由で開かれた」インド太平洋を守るための試みの一つである。翌2023年5月のクアッド首脳会合は、IPMDAが東南アジアと太平洋の諸国にデータを既に提供しており、近くインド洋にも拡大すると表明した。中国に言及することは避けつつ、データが不法な漁業に対抗し人道危機に対処する上で有用であることを強調した。
米国とその同盟国の軍事当局はIPMDAの戦略的重要性に注目している。情報は、インド、シンガポール、ソロモン諸島、バヌアツの融合センター(fusion center)を通じて共有される。
インド太平洋地域の多くの諸国は中国の軍事的活動や不法な漁業に苛立っているが、中国に直接挑戦すること、あるいは中国と米国との対決に巻き込まれることを警戒している。
クアッドの政府当局はいずれの諸国がデータを受け取っているのかを言いたがらない。しかし、昨年11月にフィリピンを訪問したカマラ・ハリス米副大統領はフィリピンがそのうちの一国であることを明らかにした。南シナ海で一方的な海洋権益を主張する中国との間で、フィリピンおよび他の4カ国は紛争を抱えている。これら諸国にとっての問題の一つは、中国海警の船舶や漁船がその身元と位置を発信するトランスポンダー(応答装置)を解除してしまい、追跡が困難になっていることである。
IPMDAが契約したホークアイ360という企業は、トランスポンダーが解除されていても船舶が発する無線のシグナルを監視する21基の低軌道の衛星を運用しているので、それとその他の情報によって船舶の身元と位置を特定することができる。
西側は不法漁業やその他のインド太平洋諸国の懸念分野に努力の焦点を当てることによって、中国に対抗する努力により広範な支持を獲得することを期待している。薄暗く不透明な海洋の策謀に光を当てることは好ましい出発点と思われる。
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この記事は、クアッド(日米豪印)のIPMDA(海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ)を主題とする。