2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年9月10日

 つまり党・国家の宣伝機関である国営メディアが「事実」を配信するから、それ以外の大衆紙などは論評や関連記事を紙面やネットに載せるな、と統制を徹底した。それによって言論空間を完全にコントロールしようとしたのだ。開明的な独自取材で知られる北京の新京報や京華時報なども「新華社電」で埋め尽くされた。

 それだけ習指導部は、薄公判による「世論の暴走」に警戒を強めたのである。

共産党指導部が決める判決

 では、薄熙来は来るべき判決でどれほどの量刑になるか。北京の弁護士は「否認したわけだから、罪を認めた場合よりも重くなり、懲役18〜20年、または無期懲役ではないか」と見る向きが多い。

 しかし三権分立が確立しておらず、共産党が司法に介入する中国では、政治的・社会的に敏感な案件の判決は裁判官が決めるのではなく、党中央指導部が決める。薄熙来ほどの大物になれば、習近平ら政治局常務委員や長老らの判断が最優先される。1995年に失脚した陳希同(元北京市党委書記)の懲役16年や、2006年に解任された陳良宇(元上海市党委書記)の同18年が目安になるが、これらより背後が複雑な薄熙来事件では「長老の鶴の一声で懲役12年になることだってある」(北京の中国人学者)。

 薄熙来の公判が結審した翌日の8月27日に政治局会議が開かれたことは注目に値する。結審を待って開かれ、薄問題で意見交換されたのは間違いない。

 党中央は、国営新華社通信を通じ、「11月に党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)を北京で開催する」と公表したが、5年に1回、新指導部発足の翌年に開かれ、指導部の経済政策などの方向性を示す3中総会は近年では1998年、2003年、08年と10月に開催されている。今回も10月開催との下馬評が多かったが、結局11月にずれ込んだ。これは開催までに調整しなければならないことが多い表れだ。

「虎」・周永康を捕まえなければならない訳

 3中総会の基調を決めた8月27日の政治局会議で打ち出されたのは「改革深化」と「反腐敗」だった。

 習近平は昨年11月の総書記就任後、「虎もハエも一網打尽にする」として、腐敗退治しなければ、「党は滅びる」と危機感を訴えてきた。政治局会議も「虎もハエも…」と強調したが、共産党筋の間でも、薄熙来に続く「虎」は、薄の盟友である周永康・前政治局常務委員(前党中央政法委書記)を指す言葉になっている。


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