2024年6月20日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年9月10日

 初公判に合わせて法院の前には、大量の陳情者が訪れた。中には毛沢東の肖像画を持つ薄の支持者の姿もあった。「薄熙来裁判が公正に行われているかどうか注目したい。薄の審理を通じて中国が法治に推進することを望む」。ある陳情者はこう語った。

 もし薄熙来に対する判決が軽ければ、習が唱える「反腐敗」「法治」への信頼が揺るぎかねず、厳刑に処すれば、薄を支持する保守派や貧困層から「政治迫害」だとの批判が高まりかねなかった。

「自供一転」の狙い

 多くの北京の司法専門家は、初公判を控え、「懲役15年~無期懲役の判決では」と予測した。

 習指導部は、何とか薄に罪を認めさせ、保守派や貧困層に残る薄熙来の影響力を完全に喪失させ、事件が党内にもたらした亀裂を修復したいと考えた。この思惑通りに解任直後、薄は罪を認め、上申書を出した。公判最終日に当時のことを薄はこう振り返っている。

 「当時の私の心の中に、党籍とわが政治生命を残そうとの希望があった」。罪を認めれば、政治的復活もできるという甘い幻想を抱いたが、共産党大会直前の2012年9月28日の政治局会議で薄の党籍剥奪と刑事責任追及が決定する。

 新たに発足した習指導部は、罪を認めた薄に対し、法治や反腐敗をアピールできる重い罪でありながら、保守派らも強く反発しない妥当な線として「懲役15年~無期懲役」という判決を想定したとみられる。

 しかし起訴(7月25日)後の8月14日に開かれた法院の事前会議で、薄は上申書について不当な圧力の下で書かされ、明確な誘導があったとして「『違法証拠』として撤回を要求した」(公判証言)。罪を認めざるを得なかった圧力の背後に関して一人息子の薄瓜瓜は米紙ニューヨーク・タイムズに宛てた声明で「もし父が黙々と(当局に)服従することが私の安寧の条件となっているならば、判決には道徳的な重みはない」と指摘した。

「薄熙来の夢」は政治生命の復活

 こうした「密約」を薄は自ら破った。薄熙来事件で多くのコメントを発表している北京大学法学院の賀衛方教授は、薄熙来の政治的狙いをこう解説する。

 「薄は罪を認めた時でさえ、自己の犯罪を否定する最後の機会を待っていたのではないか。当然、彼は監獄の外では彼の支持者が彼のために努力していることは知っている。現在64歳である。ある時期が来れば、政治家として再び登場できるとまだ信じているのだろう。だから彼は潔白を保持しなければならない。彼は非常に賢く、政治能力もとても高い。法廷で明確に犯罪を否認すれば、未来において有利な政治的機会を再び得られるというのが『薄熙来夢』(薄熙来の夢)だ」。


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