中国の元重慶市党委書記・薄熙来氏が失脚し、妻の谷開来氏も殺人容疑で訴追された事件は、中国のドロドロした権力闘争とも絡んで3月から4月にかけて世界規模での大きなニュースになった。この事件は遠く離れた米国のハーバードにも影を落としている。
薄熙来氏の息子である薄瓜瓜氏はハーバードケネディスクール(行政大学院)に在学する2年生だが、父親をめぐるニュースがメディアを騒がし始めたころから学校からぱったりと姿を消し、大学内での話題になっている。米英のメディアは息子の薄瓜瓜氏がハーバード大学近くの高級マンションに住み、高級車を乗り回しているなどの報道を展開し、米国に留学している中国の高級幹部の子弟の貴族的な生活を批判しているが、こうした報道にハーバードも困惑しているようだ。
実際にケネディスクールに在学している学生に話を聞いてみると、薄瓜瓜氏は騒ぎになる前までは授業に出て発言もするなど普通の様子で、同じ授業をとっていた学生が見かけることも多かったという。英国の名門オックスフォード大学を経てケネディスクールに入学しているだけに英語は堪能で、活発な学生だったという。ケネディスクールは2年制の大学院で、2学年で日本人学生は10人強だが、中国人学生は20人以上いる。その中でも結構目立つ存在だったようだ。
共産党幹部の父親を自慢する息子
留学生の多いケネディスクールでは毎年夏、それぞれの国の出身者が中心となって学生向けに研修旅行をアレンジする恒例行事がある。日本に関心のある学生には日本人学生がコーディネートする「ジャパントリップ」、中国に関心のある学生向けには中国人学生がコーディネートする「チャイナトリップ」など。
今回、一躍注目の的になっている薄瓜瓜氏は昨年、チャイナトリップを引率する学生の一人だった。関係者によると、中国滞在中は普通の学生の研修旅行では会えないようなハイランクの人物に会うことができるなど、父親の影響力を使ったと思われるような場面が結構あったという。また薄瓜瓜氏自身も父親が大物であることを隠そうとはしなかったそうだ。
父親のスキャンダルが取りざたされ、各国メディアの関心が家族にまで及んできたことを受けて、ケネディスクールは3月下旬、全学生向けに一斉にメール送信した、そこには「ケネディスクールはメディアなどに対して学生の個人情報やプライバシーに関しては保護する方針であるので、みなさんも留意してほしい」という内容だった。具体的な内容は一切記されていなかったが、関係者の多くは、メールは薄瓜瓜氏のことを念頭に置いており、「メディアの取材などには応じるな」という趣旨だとすぐに理解したという。