2024年12月3日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年9月10日

 収賄・横領、職権乱用の3つの罪で起訴された中国の薄熙来元重慶市共産党委員会書記(元中央政治局員)の初公判が8月22日から5日間にわたり、山東省済南市中級人民法院(地裁)で開かれた。現地・済南で取材していて想定外だったのは次の点だ。

 (1)外国人の傍聴やメモ取りを認めない法廷でのやり取りが、ほぼリアルタイムで、同法院の中国版ツイッター「微博」で実況中継された。

 (2)罪を認めさせ、新たな党内混乱を避けようとした習近平指導部と、穏便な対応を期待した薄熙来側で成立した「密約」を、薄被告自らが破棄し、一転して罪を否認した。

 実は、この2点は、習近平総書記(国家主席)と薄熙来の政治的思惑が絡み合って表面化したものであった。薄熙来の政治的狙いは何なのか。

パフォーマンスとサプライズ

 まず派手なパフォーマンスと、サプライズを好む「薄熙来政治」の本質について振り返っておこう。

 薄が書記を務めた時期、「重慶モデル」という言葉が流行した。薄熙来の強烈なリーダーシップの下、法概念を無視した強権政治で大衆を動員する一方、庶民が不満を強める貧富格差の是正策を打ち出し、社会主義の本質を追求するものだ。

「打黒」「唱紅」「共同富裕」—。
「打黒」(法を無視してでも「打黒=マフィア撲滅=」を掛け声に、企業家や腐敗幹部、政敵を摘発する。
「唱紅」(大衆を動員して毛沢東時代の革命歌を熱唱し、貧しくても平等だった毛沢東時代に郷愁を強める)
「共同富裕」(低所得者向け住宅の建設や、出稼ぎで両親のいない留守児童への卵・牛乳配布など)

法院前に現れた毛沢東の肖像画

 つまり毛沢東時代に回帰し、文化大革命(1966~76年)のような民衆熱狂状況をつくり出し、絶大な支持を獲得することが、薄熙来の政治的狙いだった。毛沢東を真似た薄熙来は保守派や貧困層の支持を得た。

 摘発後、政権を引き継いだ習近平は、薄熙来の「亡霊」に悩まされた。


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