北京の共産党筋はこう明かす。
「周は既に自由を制限されている状況。つまり党中央の管理下に置かれている。党内では腐敗に対する不満が強まり、習も追い詰められており、やらなければ、今度は自分が厳しい状況に陥ると認識している」
周は石油利権を一手に握り、江沢民の後ろ盾を得つつ、指導者として頭角を現した「石油閥」。6月には、中国石油天然ガス総公司社長、国土資源相、四川省党委書記時代に秘書などとしてずっと側に付き添った郭永祥元四川省副省長が拘束されたほか、8月末以降には同公司が発展した中国石油天然ガス集団(CNPC)の蒋潔敏前会長(国有資産監督管理委員会主任を解任)ら、周に近い高官が相次ぎ拘束され、取り調べを受けている。
周の問題については3中総会前後に結論が出るとの観測が北京では流れている。刑事責任を追及できなくても、「反腐敗」を訴えると共に、石油利権の追及を通じて改革を阻んできた既得権益集団にメスを入れ、「改革深化」をアピールする必要に迫られているのだ。
「重慶の中国化」
それでも習の改革は「経済」分野にとどまり、決して「政治体制」には踏み込まない。
「結局、習近平の路線は、薄熙来なき薄路線だ」と指摘する改革派知識人は多い。つまり毛沢東の政治スタイルを強く意識すると共に、憲法に基づく憲政や民主化、公民社会など西側の普遍的価値観を全面否定し、人民活動家や弁護士らを拘束し続ける習指導部の強権政治は、薄熙来が重慶で展開したことと変わらない、のではないかという見方である。
今、「重慶の中国化」現象が顕著なのだ。
薄熙来は公判を通じて保守派や貧困層の支持をより獲得したとの見方も強い。さらに改革派は強硬な習の政治手法に批判を強めている。
3中総会で新たな改革を打ち出さないと、習は求心力を失い、薄熙来との新たな闘いに勝利できない。文化大革命以降、汚職で最高指導部・政治局常務委員の経験者が摘発されたケースはない。周永康に手を付けるのは至難だが、その慣例を破ってでも、本当の「虎」を捕まえる決意を党内や国民に示し、反腐敗の名の下に薄熙来らの息を止めなければならないのである。
薄熙来の「野望」に習近平は追い詰められている。3中総会に向けた攻防は激しさを増していると言えよう。
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