メローニ政権の発足当時から、EUの復興基金からの巨額の支援資金を有効に利用してイタリア経済を成長軌道に乗せることが出来るかには懸念が持たれていたが、投資と改革は、イタリアがドラギの時代にEUと合意した時刻表から大幅に遅延している。
これまでにイタリアが受け取った資金は総額1915億ユーロのうちの2回のトランシュの669億ユーロであるが、メローニ政権になって初めてとなる3回目のトランシェ190億ユーロのディスバース(22年後半に予定されていた)は大幅に遅延していた。
最近になって185億ユーロに減額して秋にはディスバースされることとなった。遅延の原因はイタリアが約束した7500人の大学生向けの寮の建築の義務を果たしたか否かがブリュッセルとの間で争いとなったためらしい。
そういう状況にあるので、26年半ばの期限までに支援パッケージをやり遂げ、総額1915億ユーロの残余の資金を受け取れるのかが心配される状況のようである。大統領のマッタレッラまでが、EUの資金を完全に使い切ることに失敗すれば、それは一つの政府ではなくイタリアにとっての敗北であると心配を口にしている。
成果はEUの今後にも影響
上記の社説は、支援パッケージの計画を改定するしかないと言っている。メローニ政権は、ドラギから引き継いだ計画には深刻な欠陥があるとして、欧州委員会に大幅な改定――メローニ政権は「是正」と称している――を申し入れている。
例えば、160億ユーロの公共投資を取り止めることを提案しているが、そのうち130億ユーロが地方政府が実施を担うプロジェクトであるのは、地方政府の能力に問題があることが理由のようである。そもそも巨大な公共投資はイタリアの労働事情、レッドテープ(官僚的煩雑さ)、行政能力に鑑みれば非現実的だったのかも知れない。
だとすれば、メローニ政権が望むように、優遇税制により、民間セクターを通じてより多くの資金を投入することも一つの解決策なのであろう。
また、メローニ政権は累積する裁判事案あるいは脱税のような構造改革の課題の目標を引き下げようとしているらしいが、これらの課題は競争力に直結する長年放置されて来た問題であり、ここに手をつけることは間違いであろう。
いずれにせよ、イタリアが復興基金の資金を成功裡に活用し得るか否かはイタリアにとっての問題にとどまらない。イタリアは復興基金の資金規模の3割近くの支援を得る最大にして圧倒的な受益国である。その成功・不成功はEUの共通債券の発行による経済の回復と変革を目指すEUの先例のない事業の重要な評価基準となるであろう。