ウォールストリート・ジャーナル紙の8月28日付け解説記事‘EU Eyes 2030 Target Date for Enlargement to Ukraine, Balkans’が、欧州理事会議長シャルル・ミシェルが欧州連合(EU)はウクライナやバルカン諸国を加盟させるべく拡大を推進すべきだとして、2030年を拡大の目標期日とすることを提唱したと報じている。要旨は次の通り。
スロベニアの会合における演説で欧州理事会議長シャルル・ミシェルは、EUは2030年までにウクライナ、バルカン諸国、その他の加盟候補国を加盟させる用意があるべきであると述べた。EUの潜在的な拡大の目標期日を初めて設定したことになる。
拡大を決定すること、あるいは加盟交渉を推進することは全加盟国と欧州議会の支持をも必要とする。欧州の首脳の中には、新たな加盟国を取り込むまでには10年から15年を要するとする向きもあった。しかし、昨年、スロベニアとポーランドが2030年を目標期日に設定するようブリュッセルに働きかけた。
2000年代の中東欧諸国への拡大以来、多くの欧州諸国における拡大に対する一般の支持は、民主主義のスタンダード、域内からの外国人労働者の流入、外交政策を巡る幾つかの新規加盟国との緊張関係の中で、顕著に低下した。しかし、昨年のロシアによるウクライナ侵攻によって、加盟国は近隣諸国をEUに取り込まないことの結果を怖れ始め、見解は幾分変化した。
22年6月、EUはウクライナとモルドバを加盟候補国とすることを受け入れた。EUの首脳は12月に両国と加盟交渉を開始することの是非を決定する。ゼレンスキーはEU加盟を最も重要な目標の一つに掲げている。
EUはまたバルカン6カ国(セルビア、北マケドニア、アルバニア、モンテネグロ、ボスニア、コソボ)との加盟プロセスを何とか進めようと努力して来ている。トルコとの加盟交渉は実際上凍結されている。
これら諸国が加盟の態勢を整えるには多大の困難があるが、EUではこれら生活水準の低い諸国を取り込む上で必要とされるEUの変化が焦点となりつつある。ミシェルも、現在はEU予算への拠出額を上回る額をEU予算から得ている幾つかの加盟国がネットで持ち出し国に転化することなどの困難を指摘した。面倒な問題には、EUの意思決定を全会一致ではなく特別な多数決による分野を拡大することの是非という問題もある。
ミシェルは、加盟候補国はEUのルールとプログラムに徐々に統合されることとし得ることを示唆した。そのことは次の10年間に正式に加盟するが、完全な加盟国になるにはその後何年もかかる国があり得ることを意味する。
ミシェルはEUの拡大に伴う諸問題を10月と12月のEU首脳会議の議題とするとしている。
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