ロシアがウクライナに侵攻して以降、欧州におけるポーランドの位置付けが見直されている。今や欧州は、ロシアとの戦いの最前線に位置するポーランドなしに安全保障を考えることができない。他の欧州各国も、ポーランドに背中を押されるようにしてウクライナに支援し続ける。
しかし、ポーランドも財源が無限にあるわけではない。ロシアのウクライナ侵攻は、欧州の安全保障環境を一変させたが、同時に、財政の在り方にも重い課題を突き付けている。
司法のあり方でEUと対立
欧州連合(EU)のポーランドに対する見方は、22年2月のウクライナ侵攻を境に180度転換した。ウクライナ侵攻前、ポーランドはハンガリーと並ぶEUの問題児だった。
与党「法と正義」(PiS)が主導するポーランド政府は、権威主義体制の国の例に違わず、あらゆる手を使って国内統制を強めていこうとした。メディアを弾圧し、司法に介入、政権に都合の良い人物で要路を固めていった。
EUとすれば、そういう状況を放置するわけにいかない。EUとポーランドの関係は必然的に対立を深めていった。
21年10月、ポーランドがEUの神経を逆なでする事件が起きた。ポーランド憲法裁判所が、ポーランドの国内法とEUの法が抵触するとき、国内法が優先するとの司法判断を下した。
これはEUとして見逃すことのできない話だ。EUは、EUの法を国内法に優先するものとして統合を加速してきた。各国の国内法はEUの理念に沿ったものでなくてはならない。
この件には経緯がある。ポーランド政府は15年以降、司法改革と称し司法部門への介入を繰り返してきた。18年の憲法裁判所における懲戒部門の設置はその最たるものだ。
国内の裁判所で「不当判決」があった時、懲戒部門が裁判官を処分できる。しかし、何が不当かは政府の判断次第の面がある。ポーランド政府は、これで三権分立を形骸化しようと狙った。
EUはこれを問題視し、21年7月、その撤廃を要求した。ところがポーランドはこれに反発、EUの不当介入には屈しないと上記判断を下すに至った。