2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2023年6月12日

「優等生」をいつまでも続けられるか

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国は防衛費のGDP比2%を目標にするが、今、ほとんどはこのレベルに達してない。欧州は冷戦後、防衛費を削り他の項目に予算を振り向けてきた。これまではそれでよかったのだ。

 その中にあって、ポーランドは2%目標を達成していたが、23年度予算でこれを4%に増やすと踏み込んだ。しかし、NATOを見渡しても3%を超えるのはギリシャ(3.8%、NATO22年統計)と米国(3.5%)だけで、4%を目指す国は一つもない。

 ここまで行くと、さすがに国内が騒がしくなってくる。これだけ高い水準を、今後何年も続けていくのか。高齢化が進行し社会保障費増は避けて通れない。脱炭素が叫ばれる中、そこにも予算の手当てが必要だ。一体いくらを防衛費に振り向けるべきなのか。

 特に若い世代の関心が強い。確かに、国土防衛あっての国民生活だから防衛費増は重要だ。しかしその支払いを誰がするのか、付けを廻されるのは若い世代ではないかという。

 ポーランドでは、今秋、議会選挙が予定される。ここにきて、にわかに防衛費がクローズアップされてきた。国土防衛は当然だ、ウクライナ支援も続ける必要がある。しかし、国内は未曾有のインフレで自分たちの生活を守る必要もある。付けを廻すのかという若い世代の声にも真摯に向き合う必要がある。

 「EUの優等生」として、率先してウクライナ支援の旗振りをしてきたポーランドだが、その国も、限られた財源という厳しい現実を無視するわけにはいかない。これからの対露防衛をどう考えていくのか、ポーランドは今、重要な選択を迫られているといえよう。

 事情は日本も同じだ。ロシアを中国に置き換えてみれば防衛費の話はそのまま通じる。大義があるのかないのか、さっぱりはっきりしないが、解散、総選挙となれば、少なくとも防衛費は重要な論点であるに違いない。

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