2024年12月22日(日)

Wedge OPINION

2023年7月24日

 「これだけウクライナに注目いただき、特にウクライナの主権、領土の一体性、ウクライナの人たちに対する支持を表明していただいた。一生忘れることはない」

ウクライナの日本に対する期待は、技術とノウハウ、そして数多くの局面で復興を遂げてきた経験そのものだ(POOL/GETTYIMAGES)

 今年5月、広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)に対面参加したゼレンスキー大統領は、岸田文雄首相にこう謝意を伝えた。ロシアから現在進行形で侵攻を受ける国の大統領が、遠く離れた広島の地に降り立ったことで世界の注目が集まった。

 事後のさまざまな報道を総合すると、日本政府は当初、ゼレンスキー大統領の対面参加には必ずしも前向きでなかったようである。しかし、日本はこのサミットに参加したインドや韓国、インドネシアなどの非G7の「招待国」とウクライナとをつなぐ役割も果たした。結果として、今回のG7サミットは議長国日本の〝磁力〟ともいうべき力を示すことができ、想定された以上の成功を収めたといえる。

 他方で、G7サミットを巡っては否定的な報道も散見された。「ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない」と謳った「広島ビジョン」に対しては、「核抑止体制の維持を容認する文書の発出は『広島の政治利用』だ」との批判が出た。しかし、ロシアが核による現状変更を試みかねない以上、核の抑止には頼らざるを得ない。ロシアによる核の脅しが顕在化した2022年2月の侵攻開始の前と後では、核を巡る状況と文脈は全く異なっている。ロシアに核を使わせないことに全力を注ぎつつ、核廃絶を究極の目的とすることは全く矛盾しないことを、われわれ自身がまず認識する必要があるだろう。

 サミットでは、若干の取りこぼしもあったようである。5月22日付の英フィナンシャル・タイムズ紙が報じたように、仏マクロン大統領などを中心に、ウクライナが掲げる終戦条件である「平和の公式」をG7として後押しするための「共同宣言」の発出を目指す動きがあったが、結局日の目を見ることはなかったとされる。

 しかし、同宣言案における重要なポイントは、岸田首相が議長国記者会見で示した「G7諸国による4つの認識の共有」(「国連憲章の原則の尊重」、「対話による平和的な対立の解決」、「力による一方的な現状変更の試みの阻止」、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の遵守」)として引き継がれたという。今後はこの「4つの認識」と、ウクライナの「平和の公式」とを具体的に擦り合わせ、その支持をいかにG7以外の国々にも広めていくかが問われていく。

 サミット終了後、日本においてG7が語られることは一気に少なくなったが、こうしたサミット後の課題の実現を含め、日本は年末までの期間、議長国としてG7をまとめ上げていく必要があることは忘れてはならないであろう。とりわけ今年は、ロシアによるウクライナ侵攻に関連して発生する恐れのある突発的な事案に対し、首脳、閣僚、事務の各レベルでの迅速な対応が求められる場面が続く可能性が高い。

 今年6月に発生したロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジンによる反乱の際には、G7外相会合(電話会談)が速やかに実施され、情報の共有とG7の連携が確認された。またロシアは6月末時点で、ザポリージャ原発への攻撃を準備しているとも指摘されている。仮にこの攻撃が行われれば、ウクライナのみならず欧州の広域が大惨事に見舞われかねない。こうした不測の事態への対処にあたっては、G7議長国としての日本の指導力が求められることは言うまでもない。


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