さらに、6月中旬に三重県志摩市で開催されたG7交通相会合に出席したウクライナのクブラコフ副首相兼インフラ相は、破壊されたウクライナの鉄道を新幹線基準で再建したく、その際に日本の支援を得たいとの希望を日本側に伝えたとされる。
ウクライナが従来採用していた「広軌(1520ミリメートル≪㎜≫)」を、復興再建過程で欧州連合(EU)加盟国や日本の新幹線の「標準軌(1435㎜)」に変更することを意味しており、実現すればウクライナと隣接するEU諸国間とのコネクティビティーは飛躍的に高まるだろう。このウクライナの鉄道復興計画に仮に日本が参加するのなら、ウクライナと欧州を結びつける線路の役割を、日本が果たすことになる。なによりもの復興の象徴となろう。
日本の鉄道のメンテナンス技術やオペレーションのレベルの高さも、ウクライナでは既に知られており、日本をモデルとする「持続可能な鉄道システム」の構築に期待を抱く関係者も多い。こうした日本に対するウクライナの非常に具体的な期待の実態も、日本の鉄道関係者に広く知られるべきであろう。ウクライナは復興資金や兵器だけを諸外国に求めているのではない。特に日本に求めるのは技術とノウハウ、そして日本自らが数多くの局面で復興を遂げてきた経験そのものなのだ。
復興支援の輪を
政府レベルにとどめるな
日本は年末から来年初頭にかけ、「日・ウクライナ経済復興推進会議」を日本で開催する意向を明らかにしている。ウクライナの復興を推進するにあたって極めて重要となるのが、民間企業も積極的に関与した具体的な投資計画である。しかし、ロシアによる侵攻の終結が見通せない中、ウクライナへの復興や投資に積極的に乗り出していく民間企業は依然として非常に少ないという。
戦時下の国に投資するリスクへの懸念は十分に理解できるものの、日本の優れたインフラ投資に対するウクライナの期待は、非常に高く、極めて具体的である。そしてゼレンスキー大統領をはじめとした多くのウクライナ人が、目標とする復興に日本を重ね合わせ、日本の協力を心から望んでいる。日本の政府にとどまらず、民間企業や行政がウクライナ支援に関わることは、単なる資金面での支援を大きく超えたエールを送ることになる。同時に復興支援国としての日本の地位も大きく高めることにつながるであろう。