フィナンシャル・タイムズ紙の9月6日付社説‘Italy risks wasting its cash windfall’が、イタリアの欧州連合(EU)の復興基金による支援パッケージの履行状況は合意された時刻表から大きく遅れているが、イタリアは復興基金の資金を是非有効に活用すべきであると論じ、そのためにはEUと合意して支援パッケージの計画を改定することが理にかなっていると指摘している。要旨は次の通り。
イタリアはEUの復興基金から総額1915億ユーロを受け取ることになっているが、現在のペースで行くと、イタリア政府は2026年半ばの締め切り期日までにEUの資金の4分の1しか消費出来ないかも知れない。国内総生産(GDP)の144.4%の債務を抱えるイタリアにとり、貴重な機会を逃すことになる。
イタリアは21年当時の首相マリオ・ドラギの下で復興基金による支援パッケージに同意したが、そこには長期的な経済成長を押し上げるための重要な構造改革と並んで、摩耗する物理的インフラとデジタルのインフラを強化する計画が含まれていた。
しかし、イタリア政府は合意された時刻表の速度を維持することに失敗した。イタリアは22年末までに400億ユーロを使うことが予定されていたが、その60%未満を何とか使ったに過ぎない。その多くは建設とデジタル化のための優遇税制に使われた。
しかし、実際の投資プロジェクトとなると、今までのところ少額である。計画全体の527の目標のうち118を達成したのみで、追加的なトランシェの受取りは遅延している。
イタリアがその当初の計画を完遂し得る唯一の道は欧州委員会が締め切り期日を延長する場合であろうが、それはありそうにない。計画を改定することの方がより理にかなっている。
メローニ政権はEUに計画の「是正」を既に送付した。それは都市再生を含む幾つかの公共投資を取り止め、その資金をエネルギー・インフラおよびビジネスと家計のためのグリーンの優遇税制に振り向けるものである。これらの分野に民間セクターを通じてより多くの資金を投入することは理にかなっている。
メローニは幾つかの構造改革に手加減を加えることも望んでいる。改革はイタリアの公的債務を持続可能なものとする上で有用な生産性の向上を支援するように考えられている。これらの約束を撤回することは間違いである。構造改革が対処しようとしている課題こそ、イタリアが長年EUの資金を使い消化する能力を欠いて来た原因だ。
イタリアはEUの復興基金の成功を判断する上での指標である。イタリアと一緒に計画を作り直すことがEUの利益にかなう。EUの第三の経済規模のイタリアで起きることは欧州経済とその金融の安定にとって重要である。
イタリアは、この支援パッケージを浪費するようなことがあれば、経済的憂鬱から近いうちに立ち上がることは困難となろう。