2024年5月21日(火)

キーワードから学ぶアメリカ

2023年10月2日

 米国の労働組合加入率は1960年以降ほぼ一貫して下がっており、米国の労働組合加入率は2016年のデータでは経済協力開発機構(OECD)加盟国36カ国中で5番目に低い。22年には、米国全体での組合加入率は10.1%だが、この数字は公務員(加入率は33.1%)によって押し上げられており、民間企業の加入率は6.0%に過ぎない。

 この数字を見てもわかるように、米国で労働組合が労働者全員の利益を適切に代表しているとはいいがたい状態にある。労働者の中に、明確な分断が存在する。

移民や黒人との関係

 歴史的に見ると、米国の労働組合は、長らく移民、黒人を熱心に取り込もうとはしてこなかった。1886年に創設された全国的な労働組合連合であるアメリカ労働総同盟(AFL)の初代会長であるサミュエル・ゴンパーズが反移民、反黒人の立場をとっており、未熟練労働者の加入を認めなかったこともある。米国最大の労働組合連合であるアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)も長らく移民や不法移民、黒人の取り込みに消極的であった。他方、経営者側は労働者がストを計画した場合に、移民や黒人を大量に雇い入れ、スト破りとして活用することもあった。

 現在ではALF-CIOも移民や黒人の取り込みに積極的になっているが、マイノリティの中では労働組合=白人の特権を守る集団という印象を持ち続けている人も多い。労働組合と移民団体の折り合いがよくないこと(労働組合が賃上げを要求する一方で、移民は低賃金でよいから雇用してほしいと要求する)は、自由貿易をめぐる報道に際して取り上げられたこともあるので聞いたことのある人もいるだろう。

若者の支持の変化

 もっとも、組合への未加入者の給与は加入者と比べて平均すれば少ないとか、医療保険を持っている人の割合や企業年金に入っている人の割合も組合参加者の方が高いという事実はある。それが労働組合の参加者の割合が少ないことや、公務員の参加率が高いことなどと相まって、労働組合は連帯や社会進歩を目指す団体ではなく、その加入者は特権集団だとの反発を抱いている人もいる。

 徹底的に小さな政府を提唱したティーパーティ運動やリバタリアンが労働組合は経済効率を損ねると主張したこともあり、2010年には世論調査で組合への支持率は48%程度だった(ギャラップ社調査)。

 だが、2010年を転機として、組合に対する支持率は上昇している。米国の富が富裕な1%の人に集中していることを問題視したウォール街占拠運動や、民主党のバーニー・サンダースやエリザベス・ウォーレンらの活発な働きかけもあり、最近ではミレニアル世代の若者を中心に労働組合への支持が強まっている。

 そして、22年の労働組合への支持率は71%と歴史的な高さを示した(ギャラップ社調査)。このような背景があるため、今日、バイデンもトランプも労働組合、労働者と良好な関係を築こうとしているのだと考えられる。


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