2024年2月25日(日)

21世紀の安全保障論

2023年10月5日

 このような中、ロシアが閣僚級、しかも国防大臣を派遣するのは異例中の異例だ。さらに、ショイグ国防相は、北朝鮮滞在中、パレードに出席しただけではなく、プーチン大統領の親書を携えて金総書記と会談。武器調達を担当するロシア国防省高官を伴って、新型大陸間弾道ミサイルなどが展示されている「武器装備展示会」も視察している。本来であれば「格下」のはずの北朝鮮に対して、かなり本気度が高い内容の訪朝だった。

プーチン大統領の豹変ぶり

 このように、夏の時点で既にロシアが北朝鮮との関係強化に意欲を示している兆候は出ていたが、それでも金正恩総書記が20年に新型コロナウイルスを理由に国境を閉じて以来、初の外遊先に中国ではなくロシアを選んだことは、大きく注目された。さらに金総書記の訪露中に強い印象を与えたのは、ホスト役のプーチン露大統領の対応である。

 プーチン大統領といえば、外国首脳と会談の際に、会談相手を(わざと)待たせ、会談の場に遅れて入る「塩対応」で有名だ。プーチン大統領との個人的関係構築に首相在任中一貫して心を砕いていた故安倍晋三元首相も、地元山口にプーチン大統領を招いて日露首脳会談を行った時は2時間半、18年日露会談の時も2時間半以上、首相在任終盤に行われた19年の日露会談でも45分以上、とプーチン大統領の「遅刻魔」ぶりの被害に遭っている。

 あのトランプ前大統領ですら、18年米露首脳会談の際は、プーチン大統領に1時間近く待たされた。つまり、プーチン大統領が首脳会談の場に予定時刻通りに現れることはほぼ皆無なのだ。

 ところが、金総書記訪露時のプーチン大統領は違った。金総書記を待たせるどころか、なんと、金正恩総書記を乗せた列車が極東ロシアのハサン駅に到着する前から駅で待機し、自ら金総書記を出迎えたのである。この映像は米国でもたびたびCNNなどを通じて放映され、「遅刻魔プーチンの変節」として、大きな話題となった。

 さらに、露朝首脳会談では、プーチン大統領と金総書記は、お互いを「同志」と呼びあい、金総書記は、ロシア・ウクライナ戦争におけるロシアの立場に「絶対的支持」を表明するなど、露朝関係最接近がアピールされた。

 今回の露朝接近の背景には国際的孤立を深める露朝両国の思惑の一致がある、という見方が専らだ。対ウクライナ戦争を継続するためには、弾薬不足を解消することが切実なニーズであるロシアにとっては、北朝鮮が保有する弾薬は旧ソ連の火砲でも使用することが可能であるため、非常に魅力的だ。対する北朝鮮も、コロナ禍以降国境を封鎖していたことで、食料、燃料、医薬品な、どの生活必需品の備蓄を使い果たしてしまっており、弾薬と引き換えにロシアからこれらの必需品を取得するための支援を期待できる、というわけだ。

 さらに、金総書記にとっては、訪露、およびプーチン大統領との会談の成功を演出することで、19年にトランプ米大統領(当時)との首脳会談が決裂に終わったハノイ会談から、国の指導者としてのメンツを回復したい気持ちもあると指摘されている。


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