2024年11月22日(金)

21世紀の安全保障論

2023年10月5日

内憂外患のバイデン政権

 バイデン政権は、当然、当初からこのような動きを注視していた。8月30日の時点で既に、ジョン・カービー国家安全保障会議(NSC)戦略広報調整官が、「ロシアが〝積極的に〟北朝鮮との関係を進めることを求めている」という記者からの質問に答えている。

 この際の記者団とのやり取りでは、ショイグ国防相が訪朝時にプーチン大統領からの親書を金総書記に手交、金総書記からもプーチン大統領宛の書簡が手渡されたことを、バイデン政権が把握していたことも明らかになっている。また、露朝間の「弾薬と食料」という、半ば物々交換のような合意についても、観測が流れだしですぐに「いかなる国もプーチン大統領が無実のウクライナ国民への殺戮を続けることに加担するべきではない」(カービーNSC戦略広報調整官)とけん制している。

 というのも、露朝が接近し続けることは、バイデン政権にとって新しい悩みの種となるからだ。露中接近、さらに中国がこのような動きに対して何の反応も見せておらず、黙認ともいえる対応を取っていることは、欧州とインド太平洋をそれぞれ独立した戦域として考えることはもはやできないことを改めて示したものとなる。米国はいよいよ、欧州とインド太平洋で「2正面作戦」を迫られるリスクに備えた準備を加速させなければいけないという現実がすぐそこまで迫ってきていることを意味する。

 しかもこのような難題に取り組もうとするバイデン政権にとって、現在の米国の国内情勢が大きな足かせとなる。24年度連邦政府予算をめぐる合意の不成立から懸念された10月1日以降の連邦政府一時閉鎖は、ギリギリのところで回避されたものの、その結果、米国建国史上初めて、ケビン・マッカーシー下院議長が、身内である共和党の一部の保守系議員の強い反発を受け、10月3日に下院議長不信任決議が可決され、下院議長職から追い落とされるという未曽有の事態が発生。新下院議長が選出されるまで、米議会は空転することが確実となった。

 また、24年大統領選挙が刻一刻と迫っているというのに、政権の支持率は低迷したまま。さらに「バイデン家の問題児」である息子ハンター・バイデン氏が銃器不法所持で刑事起訴され、裁判が24年に開始されることもほぼ確実となった。ここにきて、すでに80歳であるバイデン大統領の高齢も、改めて批判の焦点として浮上している。

 再選に向けた良いニュースが全く見当たらないのである。4件の刑事起訴の被告人として大統領選挙を戦うことになるトランプ前大統領の状況が、別の意味で他人ごとではないのだ。

 ロシア・ウクライナ戦争も終わりが見えない中、内政問題でも外交問題でも、良いニュースがないバイデン政権。このまま24年を迎え、実質的にレイム・ダック化してしまうのだろうか。

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