2024年5月3日(金)

WEDGE REPORT

2023年9月29日

 北朝鮮の金正恩総書記が9月13日から17日にかけて行ったロシア公式親善訪問は、国内外で大きく報じられた。プーチン大統領との首脳会談が宇宙基地で行われ、金正恩氏が戦闘機工場や海軍基地を訪問したことを受けて、多くの識者が両国の軍事協力が拡大すると指摘している。

(Bborriss/NatanaelGinting/Anna Valieva/gettyimages)

 もちろん、筆者もその見方に概ね同意する。だが、筆者は複数回にわたる朝鮮労働党幹部へのインタビューから、軍事協力拡大のトリガーとなったキーワード、そして、再び外交の表舞台に立った北朝鮮が日本を巻き込み暗号資産現金化を企てていることを掴んだ。

金正恩・プーチン会談の思惑

 金正恩氏の外遊は、北朝鮮がコロナ禍で2020年に国境を封鎖した以来で、プーチン氏との会談は19年4月から約3年ぶりとなる。今回で2回目となる金正恩・プーチン会談の目的が、金正恩氏の訪問先と行事内容から宇宙・兵器開発など軍事協力の拡大にあることは、ほぼ間違いない。

 下表は、金正恩氏の動向と各地での主な随行者・対応者をまとめたものだが、金正恩氏とプーチン氏が軍と宇宙・兵器開発の責任者を伴い、トップセールスを行ったことが分かるだろう。

 この見立てについて、朝鮮労働党幹部は「2度にわたる軍事偵察衛星の打ち上げ失敗が金正恩元帥の訪露を後押しした」と指摘する。

 北朝鮮は、21年1月に開催した第8回党大会で「国防科学発展及び武器体系開発5カ年計画」を提示し、それに基づいて核技術の更なる高度化、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の命中率向上、無人偵察機の開発などを推し進め、相当の成果を上げている。だが、計画に含まれる軍事偵察衛星は、今年5月と8月に打ち上げたものの、連続して失敗した。


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