ゆくえはたまたま立ち寄って花を買った椿の母から息子の結婚祝いの花束を新居に届けることを頼まれる。紅葉(神尾)はイラストの先生の自宅を探しあぐねた末に、椿の新居の前でゆくえと出会う。夜々(今田)は椿が美容院でカットしたときに社員証を忘れたので届けに来たのだった。
「Z世代」つまり物心ついたときからスマホとSNSになじんだ世代の青年たちは、それ以前の世代に比べて絆が強まっただろうか、孤独は癒されただろうか。筆者はそうではないと考える。SNSへの自分の投稿に対する評価を気にしたり、グループから〝ハブられる〟のを避けようとしたり、孤独はかえって深まっているようにみえる。実際に若者たちの精神疾患と不登校などは増えているのである。
セリフから感じる孤独感
本ドラマの主人公4人たちは自分では自覚していないが、この世界のなかで強いのではないだろうか。「ふたりになるのが苦手」でありながらも、懸命に自分の生き方を模索しているからである。
「いちばんすきな花」にこめられたスタッフたちのメッセージはそこにあるのではないだろうか。孤独でも強く生きられる、そして何人かの仲間を得ればさらに強くなる。
第1話(10月12日)と第2話(19日)によって、主人公たちの「ふたりが苦手」なエピソードが綴られていく。「silent」がそうであったように、脚本家・生方美久のセリフは物静かで美しい。青年たちに孤独を感じさせるシチュエーションが周囲の人々のセリフを通じて感じさせる。
夜々(今田)へ前日に関係を迫った職場の同僚の相良大貴(泉澤祐希)がアパートの入り口で待っていた。相良が「友達でもいいから」というと、夜々は「なぜ(恋人より)友達が格下のようにいうの!」とはねつけた。
走って逃げた夜々を相良は追った。たまたま公園のブランコにいた紅葉(神尾)の腕をつかんで、夜々は「つきあっている彼だから」と言い放つ。
小学校の同級会に出席したゆくえ(多部)は、かつて交換日記をしていた3人の友人のうち2人から他のひとりの結婚式以来だね、といわれる。友達だと思っていたのに、ゆくえだけが披露宴に呼ばれていなかった。