田部康喜のTV読本

2020年8月14日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Ilya Ginzburg/gettyimages)

 「私の家政婦ナギサさん」(TBS・火曜午後10時)は、製薬メーカーのMR(Medical Representative)として、自社の薬の成分や効能を説明する仕事に就いている、相原メイ(多部未華子)が家政婦として契約した、鴫野ナギサ(しぎの・なぎさ、大森南朋)と繰り広げるコメディである。

 多部未華子といえば、代表作「君に届け」(熊澤尚人監督、2010年)で、主人公の三浦春馬の恋心をなかなか気づかない美少女役が印象に残る。あれから10年、高校生を演じた多部は実年齢に近いアラサーの28歳の美貌のキャリアウーマンである。

 三浦春馬が亡くなってから、オンラインのビデオサービスの邦画ランキングをみると、三浦主演の映画やドラマの数々がランキング入りしている。「君に届け」を観ると、三浦春馬は三浦春馬である。つまり彼の透明感は当時からこれまで変わらなかった。

 「エデンの東」のジェームス・ディーンも、日活の石原裕次郎の後輩にあたる赤木圭一郎も、夭折の俳優には忘れえぬ聖なる存在となるのかもしれない。また、共演した女優陣があたかも亡くなった俳優の残りの人生を歩むかのように、成長していくのも興味深い。

 米トニー賞を幾度も受賞した、ジュリー・ハリスは「エデンの東」のヒロインである。赤木圭一郎には、浅丘ルリ子や芦川いづみ、笹森礼子ら、その後日活を背負う女優陣が共演者に並んでいる。

 さて、多部未華子である。「君に届け」と並んで「夜のピクニック」(長澤雅彦監督、2006年)を愛するファンも多い。高校の伝統行事である「歩行祭」で、全校生徒が24時間で80キロをただひたすら歩く物語である。そのなかで淡い青春のドラマが重なっていく。

 多部未華子の過去に長い時間をかけたのは、「私の家政婦ナギサさん」をぜひ観てほしいからである。優しく素直な娘が、コメディエンヌとして主役の女性を演じている。「君に届け」のなかで、多部の友人として登場している女優陣は、大林亘彦監督が「20年に1人の女優」と呼んだ、蓮佛美沙子であり、連続テレビ小説主演の夏菜であり、美少女の桐谷美鈴である。

 女優の高峰秀子は「子役から娘役、そして大人の女性へと女優は壁がある」と語っていた。多部はライバルたちをしのいで大人の女性役にかけのぼったのではないか。

 ドラマは、天保山製薬の横浜支店の敏腕MRである、相原メイ(多部)が支店長、副支店長に次ぐ地位のリーダーに任命される。この前から仕事が忙しいので、メイの部屋は散らかし放題。ベッドは洋服や下着置き場と化していて、寝るのはソファのそばの床といった具合だった。料理はからっきし不得意で、コンビニのカップヌードルが夜ごはんというありさまだった。

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