田部康喜のTV読本

2020年7月31日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(MattGush/gettyimages)

 「MIU404(ミューヨンマルヨン)」(TBS、金曜午後10時)は、綾野剛と星野源が、新設の第4「MIU(Mobile Investigative Unit:機動捜査隊)」の隊員としてコンビを組む、異色の警察ドラマである。「404」はふたりが乗り込んでいる車のコールサインだ。

 綾野剛が扮する、伊吹藍(いぶき・あい)は奥多摩の交番勤務を8年務めて、機動捜査隊の隊員になった。運動神経が抜群で走力がある。自動車のエンジン音を聞き分けて、車両を識別する能力も持っている。野生の勘が鋭い。星野源の役の志摩一未(しま・かずみ)は、対照的に論理的に事件の解決を図る理知的な男である。元捜査一課の花形刑事だったにもかかわらず、運転免許試験場を長らく務めて、新設の第4機動捜査隊に転属になった。

 このドラマは、殺人事件の謎を解いている刑事物とは一線を画している。ふたりの行動は、現代社会の病巣をあぶり出すのである。

 伊吹(綾野)と志摩(星野)のふたりは、機動捜査隊が本来やるべき事件の初動捜査にとどまらず、認知症の徘徊の老婦人を追い、偽のストーカー通報によって警官をゲームのように愚弄する高校生たちの悩みを浮き上がらせ、ベトナム出身の女性留学生の苦闘に同情を寄せる。

 ドラマの成功は、野木亜紀子の脚本の深さによっている。映画の監督は、主要なメンバーによってさまざまな映像を作り出すことから、キャストだけではなくスタッフも含めて「黒沢(明)組」とか「小津(安二郎)組」と呼ばれる。

 脚本家ではあるが、「野木(亜紀子)組」があるように思う。志摩役の星野源は、野木作品の大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)」(TBS、2016年)の主役である。

 今回のドラマの主題歌は米津玄師の「感電」である。やはり、野木のヒット作である、石原さとみが法医学者に扮した「アンナチュラル」(TBS、2018年)の主題歌「Lemon」は、米津の出世作である。

 ♯5(7月24日)は、頻発するコンビニ強盗に備えて、伊吹(綾野)と志摩(星野)は、コンビニの店員になって警戒に当たっている。系列店のベトナム人店員であるマイ(フォンチー)が勤務する店の商品が足りなくなったので取りに訪れる。

 マイは、日本語学校に通う留学生である。留学生は原則として、週に28時間しかアルバイトができないが、彼女はコンビニに加えて、ラーメン屋と運送会社でも働いている。ベトナムの平均月収は3万円。渡航費用のために背負った借金を返すためにも、月に20万円以上は稼がなければならない。

 午前3時33分、伊吹と志摩が警戒していたコンビニばかりではなく、周辺の何店舗ものコンビニがいっせいに強盗に襲われた。伊吹と志摩はふたり組を逮捕する。

 複数の店が襲われたなかで、ひとりの犯人だけが逃走した。その店は、マイ(フォンチー)が務めていた。犯人は、ベトナム語でバックヤードにあるカネを出すように、マイに命じた。そこにカネがあることは、経営者と店員だけしか知らないので、マイは共犯が疑われた。

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