2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2020年5月11日

 新型コロナウイルスの感染拡大は、日本で暮らす外国人労働者にも大きな影響を及ぼしている。仕事を失った実習生や日系人も少なくない。

(rockdrigo68/gettyimages)

 そんな中、以前と変わらぬ生活を続ける外国人がいる。コンビニやスーパーで売られる弁当の製造工場、宅配便の仕分け現場などでアルバイトをしている留学生たちだ。留学生を弁当工場へ派遣している業者幹部が言う。

 「新型コロナによってテレワークが増えた結果、一部のコンビニでは弁当への需要が減っています。とはいえ、スーパーなどでの売り上げは見込める。うちの場合、今のところ留学生の派遣切りはありません」

 留学生のアルバイトといえば、コンビニや飲食チェーンなどの店頭で働く外国人をイメージしがちだ。しかし、顧客と接する現場で働ける留学生は「エリート層」である。それよりずっと多くが、弁当工場のような私たちが普通に生活していれば目に触れない場所で働いている。日本語が不自由でもこなせる仕事だからだ。

 弁当工場や宅配便の仕分けは、とりわけ留学生のアルバイト頼みが著しい。特に日本人が嫌がる夜勤はそうだ。

 飲食チェーンなどでは、留学生のアルバイトが減った。日本人学生でもバイトを失い、学費の支払いができなくなった若者もいる。その意味で、バイト先のある留学生は幸せなのかもしれない。

 とはいえ、弁当工場は密閉空間だ。しかも留学生たちは工場まで長時間、電車やバスを利用する。新型コロナへの感染リスクは決して小さくない。

 弁当づくりは「巣ごもり需要」で多忙を極める宅配便の仕分けと同様、日本人のライフラインに直結する仕事と言える。だが、一般の人々の関心は薄い。コロナ禍の最中に危険を冒し、なぜ留学生たちは日本人のために弁当をつくり続けているのか。

 出入国在留管理庁によれば、留学生の数は2019年末時点で34万5791人に達し、12年末から約16.5万人も増加した。安倍政権が「留学生30万人計画」を成長戦略に掲げ、留学生を増やしてきた結果である。

 こうした留学生の急増は、アジア新興国における日本への「出稼ぎブーム」によって起きている。貧しい国の若者たちが“留学”を装い、出稼ぎ目的で来日する。留学生には「週28時間以内」のアルバイトが認められるからだ。

 日本への留学には、入学先となる日本語学校へ支払う初年度の学費などで100万円以上が必要となる。新興国では庶民の年収の数年分に相当する金額だ。そこで彼らは費用を借金に頼る。日本で働けば、簡単に返済できると考えてのことだ。

アルバイトの「登竜門」

 留学費用を借金に頼るような外国人に対し、政府は本来、留学ビザの発給を認めていない。留学ビザは、アルバイトなしでも留学生活を送れる経済力のある外国人にのみ発給するのが原則だ。しかし、原則を守っていれば、留学生は増えない。そのため日本側は書類の捏造に目をつむり、留学ビザを発給し続けてきた。

 留学希望者はビザ申請時、親の年収や銀行預金残高の証明書を入管当局に提出する。ビザ発給の基準となる金額は明らかになっていないが、それぞれ日本円で最低でも200万円以上は必要だ。新興国の庶民にとってはクリアが難しいハードルである。そこで留学希望者は斡旋業者に書類を捏造してもらう。業者経由で行政機関や銀行の担当者に賄賂を払ってのことだ。

 日本ではあり得ない話だが、新興国においては当たり前に横行している。そんなカラクリを日本側もわかってビザを発給する。留学生を底辺労働者として利用するためである。

 留学生たちは来日後、日本語学校に通いながらアルバイトに励む。とはいえ、日本語に不自由な外国人にできる仕事は限られる。いずれも日本人の嫌がる低賃金の重労働ばかりだ。中でも弁当の製造工場と宅配便の仕分け現場は、留学生にとってアルバイトの「登竜門」となっている。


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