2024年12月10日(火)

田部康喜のTV読本

2023年9月7日

 NHK夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」(月曜から木曜、よる10時45分~11時)は、朝のテレビ小説「お帰りモネ」(主役・清原果耶、2021年度前期)の妹役などで全国区に躍り出てきた天性の女優・蒔田彩珠(まきた・あじゅ)が、神戸を舞台にして大学生の就活生・笠松ほたる役を演じて、内定を取れずに行き詰まった末にたどり着いた青春コメディである。

(mapo/gettyimages)

映画祭の賞を総なめした女優が演じる就活生とは

 カンヌ映画祭の最高賞であるパルムドールを「万引き家族」(2018年)によって受賞、独立賞にあたるクィア・パルム賞にも「怪物」(2023年)で輝いた是枝裕和監督が蒔田9歳の時に見出した。現在21歳。蒔田は是枝監督を「親戚のおじさん(ような存在)」と呼ぶ。

 是枝監督作品には1カットあるいは2カット登場する〝秘蔵っ子〟である。「志之ちゃんは自分の名前が言えない」(湯浅弘章監督、2018年)と「朝が来る」(河瀬直美監督、2020年)では各種の映画祭の新人賞と助演賞を総なめした。

 「わたしの一番最悪なともだち」のタイトルの「悪」は幼い子どもがよく書くウラ返った「鏡文字」である。化粧品業界を希望して就活をしてきた、ほたる(蒔田)は入社試験を受ける企業があと1社だけになって、エントリーシートに小学校から大学時代まで同級生の鍵谷美晴(かぎや・みはる、髙石あかり)のことを書いてしまう。「鏡文字」はどちらが表か裏かはわからない関係を表している。

 「鍵谷美晴が視野に入る度になんか腹が立った」――とほたるのナレーションが入る。小学校時代に同級生たちがもめるとうまくまとめる。中学校時代もけんかした男女の同級生を握手させて仲直りさせる。高校時代には文化祭で美晴がたこ焼きのコーナーを任されるが、肝心の材料のタコが届かない。そこでも機転をきかせてチョコレート入りなどのたこ焼き作りをリードする。大学のサークルは華やかなダンス部である。

 ほたるは、積極的で協調性があり、問題解決能力のある美晴の長所を最後のエントリーシートに書き込んだ。最終的に送信するつもりはなかったのだが、ついうっかり送信してしまう。


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