「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日、木曜よる9時)はミステリー作家の三馬太郎(中村倫也)が亡き父の実家にある山村に移住して、成り行きで消防団員となり地区の連続放火事件の謎に挑む物語である。東京からやはり移住してきて、村役場の地域おこしに取り組む立木彩(川口春奈)に迫る危機がDNAの二重螺旋(らせん)のように絡み合う傑作である。
中村倫也は、映画「サイレント・トーキョー」(2020年、波多野貴文監督)や「人数の町」(2020年、荒木伸二監督)などのサスペンスばかりではなくドラマ「凪のお暇」(2019年、TBS)や「崖っぷちホテル」(2018年、日本テレビ)などのコメディを含ませた作品でも才能をみせている。
川口春奈は、「silent」(2022年10月、フジテレビ)によって、テレビのビジネス・モデルを一変させた作品の主人公として振り返られるだろう。このドラマは、民放の共同配信サイト「TⅤer」で計7200万回再生された。聴力を失っていく恋人役の目黒蓮との純愛は繰り返し観られるであろう大傑作だった。
silentと同じシーズンの「相棒」シリーズの視聴率では半分だったのが、SNSなどで話題を呼び、ロケの場所の〝聖地巡り〟現象も引き起こした。
キャスティングにも遊び心
三馬太郎(中村)は5年前に「明智小五郎賞」を受賞して作家の仲間入りをした。しかし、その後に出版した3冊のミステリーに対する読者の評判がよくなくて、スランプに陥っていた。
そんな時、岐阜県の山のなかにある「ハヤブサ」地区に残したままの亡き父親の自宅を購入したいという連絡が不動産会社から書状が届いた。太郎は子どものころ、そこで遊んだ記憶もあり、スランプから抜け出す口実も出版社に申し出て、引っ越した。