2022年12月8日(木)

田部康喜のTV読本

2022年11月12日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「silent」(フジテレビ:毎週木曜よる10時)は、俳優とそのセリフは美しいというドラマの王道をゆく最高傑作である。ヒロイン・川口春奈にとっては代表作となる。

(west/gettyimages)

 CDショップの店員・青羽紬(あおばつむぎ・川口春奈)が、高校時代に別れた元恋人の佐倉想(目黒蓮)と8年ぶりに再会する。紬はいま、やはり高校時代の同級生の戸川湊斗(鈴鹿央士)と、お互いの部屋に泊まりに行く恋人同士で、結婚のための新居探しをしている矢先だった。

 佐倉想(目黒)はなぜ、紬のもとを去ったのか。それは、卒業間近から難聴になって、いずれ完全に聞こえなくなったことを知ったからだった。

 そして、いま想は、他人とは手話で話している。家族とは声で話してはいるが、相手の言葉は聞こえない。「大事な人」という桃野奈々(夏帆)が彼を励ますように寄り添っている。彼女が想の友人なのか、恋人なのかはこれからわかってくるのだろう。

俳優を輝かせるセリフと映像

 脚本は、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した、生方美久である。紬(川口)と彼女を取り巻く、想(目黒)と湊斗(鈴鹿)は同じ世代の20歳代。生方が紡ぎだしているセリフは、静かでかつ、手話の会話を巧みに組み合わせている。美しいセリフである。

 また、映画もドラマも、俳優は美しく撮影してもらいたいものだと、筆者は常々思っている。ことに、女優はオーラをまとった、ミューズ(女神)である。

 「silent」のカメラは、登場人物たちの表情をアップで見せてくれる。俳優たちの喜怒哀楽が輝く瞬間を逃さない。

 第5回(11月3日)に至って、紬が想と再会を果たしたことが、湊斗を苦しめる。紬の湊斗に対する愛は変わらないというに。紬が想と出会って、それぞれの部屋に別れる直前、それを目撃した湊斗、紬が想と手話で話そうと、手話教室で春尾正輝(風間俊介)から学び始めたこと……。

 湊斗の部屋の屋上で、紬とふたりで洗濯物を干していくシーンで、湊斗は別れを切り出すのだった。

湊斗 別れよ。もう無理しなくていいよ。俺が無理をすると、紬にも想にもやさしくできなくなる。嫌われたくない。紬にも想にも。

 紬は、干そうとしていた洗濯物で、湊斗を叩くのだった。

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