2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2022年11月12日

 想は、1ページごとに書いた短いメッセージを、まるで紙芝居のように、紬に見せるのだった。

 「(紬と湊斗の)ふたりが別れたのは、僕のせいじゃない?」

 「ごめん」

 「8年分の思いをこれからは全部、言葉にしようと思う」

 「俺のこと、ちゃんと見てくれるなら」

 紬は、手話で答える。

 「わかった。私もそうする」

 新たな物語の始まりを告げる、美しいシーンとセリフである。ドラマ史に残るシーンといったら、いい過ぎだろうか。

ドラマ人気を示す指標「AVOD」

 「silent」は、視聴率が10%を切っているにもかかわらず、SNSなどでは大きな話題を呼んでいる。

 このドラマは、テレビの単純な「視聴率」という考え方を、一転させる番組のひとつになる可能性がある。ゴールデンタイムでも、世帯視聴率つまりテレビを見ている家庭の比率は、5割を切っている。視聴者は、リアルタイムでドラマを見るのではなく、TVerやGYAO!、キー局のビデオ・デマンド・サービスなどを利用しているのである。

 テレビ視聴の度合いを測定する指標として、最近注目されているのは「AVOD」である。つまり、リアルタイム視聴ではない、上記の新たな視聴に注目したものである。

 2022年度上期のフジテレビのAVOD配信は、再生数が約2億9000万回におよび、UB(ユニークブラウザー:視聴に使っているブラウザー)約2500万、総視聴時間が1億2600万時間。3つの部門でキー局のトップに立った。上期は、福山雅治主演のドラマ「ガリレオ」の再放送が数字を押し上げた。

 下期は、「silent」効果がでるのではないかと考える。

   
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