想は、1ページごとに書いた短いメッセージを、まるで紙芝居のように、紬に見せるのだった。
「(紬と湊斗の)ふたりが別れたのは、僕のせいじゃない?」
「ごめん」
「8年分の思いをこれからは全部、言葉にしようと思う」
「俺のこと、ちゃんと見てくれるなら」
紬は、手話で答える。
「わかった。私もそうする」
新たな物語の始まりを告げる、美しいシーンとセリフである。ドラマ史に残るシーンといったら、いい過ぎだろうか。
ドラマ人気を示す指標「AVOD」
「silent」は、視聴率が10%を切っているにもかかわらず、SNSなどでは大きな話題を呼んでいる。
このドラマは、テレビの単純な「視聴率」という考え方を、一転させる番組のひとつになる可能性がある。ゴールデンタイムでも、世帯視聴率つまりテレビを見ている家庭の比率は、5割を切っている。視聴者は、リアルタイムでドラマを見るのではなく、TVerやGYAO!、キー局のビデオ・デマンド・サービスなどを利用しているのである。
テレビ視聴の度合いを測定する指標として、最近注目されているのは「AVOD」である。つまり、リアルタイム視聴ではない、上記の新たな視聴に注目したものである。
2022年度上期のフジテレビのAVOD配信は、再生数が約2億9000万回におよび、UB(ユニークブラウザー:視聴に使っているブラウザー)約2500万、総視聴時間が1億2600万時間。3つの部門でキー局のトップに立った。上期は、福山雅治主演のドラマ「ガリレオ」の再放送が数字を押し上げた。
下期は、「silent」効果がでるのではないかと考える。