2024年12月3日(火)

田部康喜のTV読本

2023年7月7日

 NHKの連続テレビ小説「らんまん」は、日本の植物学の父といわれる牧野富太郎博士をモデルにしたドラマである。主人公の槙野万太郎役に神木隆之介、その妻の寿恵子(すえこ)役に浜辺美波を配した夫婦愛の物語の傑作である。

(Kavuto/fuwari/pkanchana/gettyimages)

 高知の名門の酒蔵に生まれた万太郎(神木)は本来その「峰屋」の一人息子でありながら、植物の魅力に取りつかれて旧制小学校を中退して学び続け、東京帝国大学の植物学教室に席を得た。担当教授との確執によって一時は離れることもあったが。

 万太郎とともに上京して手助けをする峰屋の番頭の息子・井上竹雄(志尊淳)。峰屋を万太郎に代わって継ぐことになる、姉・綾(佐久間由衣)と竹雄が夫婦となる。「らんまん」の13週(6月30日)までは青春ストーリーでもある。

「Minami Hamabe’s」とも呼べる作品

 オードリー・ヘップバーンのハリウッド映画デビュー作『ローマの休日』(1953年、ウィリアム・ワイラー監督)の新聞記者役でヘップバーンの王女役と演技を交わした、グレゴリー・ペッグは映画のタイトルに「Audrey Hepburn’s Roman Holiday」と入れるように監督に提案した。

 「らんまん」もそれにならえば、「Minami Hamabe’s」である。『君の膵臓を食べたい』(2017年、月川翔監督)で国内の各種映画賞を獲得して一躍存在感を高めた。「娘盛り」とはかつては10歳代が原義であるが、現代においては20歳代まで幅が広がっている。浜辺美波は22歳にしてまさにいま娘盛りである。

 映画の大きなスクリーンに対抗するようにして、ドラマは「アップ」の技術を磨いてきた。「らんまん」の浜辺のアップは息を飲む。『君の膵臓』の可憐な少女の成長に驚かされる。


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