太郎と小さい頃に一緒に遊んだという藤本勘介(満島真之介)の誘いで、ハヤブサ地区の消防団の分団に入った。入団早々にあった町の消防分団同士の競技会に参加したものの、太郎は小型消防車の水圧を高めに操作した結果、分団はホースの操作が困難となって来賓者を消防水でなぎ倒すはめにもなった。
消防団に入ろうとした動機のひとつが、ハヤブサ地区で3件も発生していた放火事件だった。太郎を子どものころ知っているといって、親切にしてくれた波川志津雄(大和田獏)夫婦も焼け出され、ハヤブサ地区を離れて妻の実家に引っ越していった。
この放火事件後、地区には奇妙な噂が流れ始める。乱暴者だった山原浩喜(一ノ瀬ワタル)が放火して、失踪したというのである。一ノ瀬ワタルはネットフリックス制作で世界配信され、大ヒットしている相撲部屋を描いた「サンクチュアリ‐聖域‐」の主人公を演じた元格闘家である。キャスティングの遊び心を感じさせる。
ハヤブサ消防団は警察の協力要請を受けて、浩喜(一ノ瀬)の捜索にあたる。地区の名所である滝壺のなかから浩喜の遺体は発見された。
事件とともに進むドラマ制作
「浩喜放火犯説」は地区の誰も口にするようになった。しかし、太郎(中村)は信じられない。引っ越し早々、浩喜が家庭菜園を営んでいるのを見ていると、太郎に苗とたくさんの野菜を持って自宅に来たのだった。「ハヤブサはどうね?」と浩喜の口元には笑みが浮かんでいた。
村役場の町おこしを担当している彩(川口)と太郎は、地域に観光客を呼ぶためにミニドラマを作ることで協力するようになる。殺人事件が起きて、探偵が地区の名所を回って犯人をつきとめるという筋を太郎は思いついた。
「でも、ベタな筋書きですよ」と太郎。彩はその線で脚本を書くように依頼する。
実は、彩は東京時代にドキュメンタリーを手がけた経験があった。いまも専門学校で週に2回講師を務めているという。ドラマの脚本づくりは進んでいった。
「これいいじゃないですか。女性の探偵で、ドジなワトソンがいて」と彩。地方の劇団などで活躍している俳優を起用するなかなか本格的なものだ。「女性の探偵」と「ドジなワトソン」は、ドラマの伏線なのだろうか。