2024年5月17日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年10月31日

 キャリアの中断とは、子ども(特に第1子)を持つことにより労働時間を減らさざるを得ないことなどが影響している。差別については、ゴールディン教授のブラインド・オーデションの研究がある。

 オーケストラの団員を選ぶときに、ついたてによって応募者が男性か女性か分からないようにすると、女性がより上位の段階まで進むことを示したものだ。教授はさらに、現代では、男女の収入格差の大きな要因は、貪欲な仕事を求めるか否かによるとしている。

 貪欲な仕事とは、不規則な日程と長時間労働を要求し、その代価として高い報酬を支払う仕事という意味である。欧米でも、貪欲な仕事には、男性と未婚女性だけが残り、既婚女性が子どもを産むと、そのような仕事にはつかないようである。

 子どものために時間を使うことを欲するからである。これが、同レベルの能力を持つ男性と既婚女性の賃金格差の大きな要因であるという。

日本の男女格差の現状

 以上のゴールディン教授の分析から、日本が学べることは何だろうか。まず、日本における男女格差の現状から説明しよう。

 日本の世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数(GGI)は2023年で146カ国中125位である。この指数は、教育(高等教育就学率の男女比など)、健康(健康寿命の男女比など)、経済(勤労所得の男女比、管理的職業従事者の男女比など)、政治(国会議員の男女比、閣僚の男女比など)に分かれており、日本は教育、健康では上位にあるが、経済、政治では極めて低位にあることから、全体の順位もさがってしまう。

 経済では、日本で女性のパートタイム労働者が多いこと、女性の管理職が少ないことがジェンダーギャップ指数を低下させている。なぜ管理職が少ないかと言えば、貪欲な仕事に就こうという女性が少ないからだろう。ただし、ゴールディン教授のいう貪欲な仕事とは、単なる管理職というよりもっと上のレベルの仕事であるように思える。

 教授は、経営学修士号(MBA)を取得した男性と女性は、当面は賃金差が少ないのに10年もたつと大きく異なると述べているからだ。すなわち、役員など、より上級の管理職のイメージだろう。政治家に女性が少ないのも、無限定に働くことを要求される仕事であるとみられる。


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