父親の育休取得の促進を狙い、2022年に施行された改正育児・介護休業法。子どもの誕生直後に取得できる「出生児育児休業(産後パパ育休)」などの新制度の開始から1年が経過し、男性の育休取得は順調に向上していると報じられている。厚労省「令和4年度雇用均等基本調査」での取得率は17.13%(前年は13.97%)、経団連「『男性の家事・育児』に関するアンケート調査結果」では47.5%(前年は29.3%)と、上昇のほどが見て取れる。
しかしそれらの調査をより細かく見ると、産業別に取得の差が開いている実態が浮かび上がる。当事者である父親たちからは、「希望しても取れない」「制度はあっても使えない」との声が絶えない。
これまで父親の育休取得のいかんは、「育児に対する主体性の有無」という、個人の意識問題で語られがちだった。育休を取らないのは父親が望まないから、育児をしたくないから、という因果づけだ。産後パパ育休のような制度が新設されたのも、父親が育児に関わる時間を増やし、子育てを主体的に担うことを促す目的があった。
しかし社会的に取得が推進され、世界有数と評価されるレベルで制度が整えられた今、この因果づけだけで父親育休を語るには、疑問符が浮かぶ。
育休を取得する(できる)父親と、そうしない(できない)父親を分けるのは、本当に「個人の意識」だけなのだろうか?
育休取得率の低い産業分野の共通点
その疑問を念頭に置き、前出の厚労省調査「育児休業者割合」を見ていこう。取得率は産業分野によって差が大きく、最も多い「金融業、保険業」は37.28%、最も少ない「卸売業、小売業」は8.42%と、両者の間には28.82ポイントもの開きがある。
この調査で取得率10%未満と特に低さが目立つのは、「卸売業、小売業」と、「宿泊業、飲食サービス業」の2分野。これらの産業に就業する父親たちは、「金融業、保険業」など育休取得率の高い分野で働く父親たちに比べて、「育児への主体的な意識が薄い」ということなのだろうか?