コロナ禍もとりあえず収束し、円安もありインバウンド需要で賑わう日本。東京も国内外の観光客で溢れている。
そんな東京の観光名所の一つが、中央区のベイエリア、豊洲市場からも一駅の「月島もんじゃストリート」だ。名前の通り東京名物のもんじゃ焼き屋が軒を連ね、昼間から観光客で賑わっている。
そんな界隈の一角に「くじらストア」と書かれた無人店舗が今年の夏に出現した。冷凍自販機2台と常温自販機が1台。「くじら竜田揚げ」「くじらベーコン切り落とし」、「くじらカレー」などが1つ1000円、クジラ缶詰は3つセットで2000円で販売されている。必ずしも安くはないが、ほぼ全て日本語表記のため、インバウンド需要目当てではなさそうだ。
そんな物珍しいクジラの自販機、値段は常温が1台100万、冷凍は1台180万円するのだが、この3分の2は税金からの拠出である。日本は商業捕鯨が禁止されている国際捕鯨委員会(IWC)を2018年に脱退、翌19年から自国排他的経済水域内で商業捕鯨を再開している。
緒に就いたばかりの商業捕鯨を補助するため、国は「共同船舶」という国内唯一の沖合捕鯨操業会社に「円滑化実証事業」という費目の下に補助金を出している。物珍しいクジラ自販機店舗の費用の3分の2は、このお金で賄われている。
商業捕鯨の運転支える国のゼロゼロ融資
日本の捕鯨事業が補助金に依存しているのは今に始まったことではない。1987年から国費による補助のもと調査捕鯨が開始され、2000年代には約10億円前後が国庫から支出されていた。
IWCに加盟し商業捕鯨が実施できなかった当時は調査名目でクジラを南極海と北太平洋で捕獲、そこから得られる鯨肉の販売収益で事業を回転させていたのである。これが16年度からは国からの補助金に全面依存する事実上の国営捕鯨となり、補助金額も50億円へと5倍増し、現在でもこの予算規模が続いている。2021年度からそのうち10億円を捕鯨会社「共同船舶」へ貸し出すかたちとなったが、担保ゼロ、利息ゼロという破格の条件での融資である。