求められる国費に依存しない経営
商業捕鯨が再開して早や4年。調査名目で捕鯨操業に国費が投じられるようになってから数えると三十数年が過ぎている。
三十数年たった今、もうそろそろ独り立ちしてはどうかと言うのは厳しすぎるのだろうか。政府からの補助金や無利子無担保融資に依存しない企業になるべきだというのは言い過ぎなのだろうか。
かつて国際捕鯨委の下で商業捕鯨モラトリアムが実施された際、捕鯨業者は存続の危機に立たされた。そうしたなか、「日東捕鯨」という大型捕鯨会社は生き残りを模索、マクドナルドに卸すフィレオフィッシュなどを主力商品とする水産加工会社へと業態を転換した。
その後ニッスイのグループ企業となり、21年にその一部となったが、補助金に依存しない経営を保ったのである。捕鯨を主たる事業とするかは別として、一民間企業としての経営の自立が望まれる。
南極などの「クジラの調査」も、その必要性が検討されるべきだろう。捕るあてのない海域で20億円をかけてクジラの捕獲頭数の算定根拠となる資源調査をするより、その予算を使ってわれわれが実際に利用している魚の資源調査を行うことを優先すべきではないのか。
現在わが国では2020年に施行された改正漁業法の下、科学的な資源評価の下で水産資源を管理するという水産改革が進行中である。こうしたなか、あまりに資源評価に対する予算が少ないとの声が関係者からたびたび聞こえてくる。
南極海などで捕鯨を実施する場合は、国際条約の関係からIWCへの再加盟が必要となってくる。その目途が立っていないなか、「調査のための調査」は必要なのか。捕鯨の将来にどのようなビジョンを持っているのか。そのビジョンを明確化したうえでの政策の実施が望まれよう。
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