偉人の意外な一面から学ぶ
三冊目は「時代を創った怪物たち―古今東西の偉人・賢人・人たらし…への手紙」(島地勝彦著、知的生きかた文庫)である。週刊プレーボーイを100万部雑誌に育て上げた伝説の編集者である島地勝彦氏が、古今東西の偉人や知名人100人の知られざる横顔をまとめた。
氏が実際に会った人物もいれば、伝記などもとにした歴史上の人物も含まれているが、著者は彼らを「怪物」と呼び、あたかも彼らの葬式に列席し、弔辞を読むかのようにその人の生きざまを紹介した。
ある地方の立志伝中の人物として今も地域で尊敬されている人物が、実は借金魔であり、浪費家であったことなど、表向きとは全く異なる別の顔やダークサイドも紹介される。田中角栄やケネディ、サッチャーなどの政治家から経済人、作家、俳優、歴史上の人物まで幅広くとりあげた。中でも著者が高く評価しているのが大正期に東京市長を務めた後藤新平である。
本書で後藤が世を去る前に言い残した言葉が紹介されているのが非常に印象的である。
「よく聞け。金を残して死ぬやつは下だ。仕事を残して死ぬやつは中だ。人を残して死ぬやつは上だ。覚えておけ」
本書で紹介された人物の怪物性を探っていくと、人間の業というべき本質が見えてくる。世の中に広がっている人物評価の背後に実は別の顔もあることを洒脱な文章で気づかせてくれる。
普段はゆっくりと時間が取れない人でも、冬の夜長を有効に使って「新たな気づき」を得る読書の楽しみを開拓するのも悪くない。