香港では2023年12月10日に区議会選挙が開催される。区議会議員選挙は香港で最も民意を反映しやすい選挙と言われ、前回19年11月の選挙では、逃亡犯条例改正案に端を発した大規模デモの影響から投票率は71.23%、民主派が全議席の8割以上を占め圧勝した。
しかし、今回は23年に区議会選挙の制度改革が行われ、事実上、親中派内だけで戦う選挙となった。選挙への関心は低下していると言われているが、香港市民の声は?
制度改革で民主派立候補はゼロ、市民の関心は?
民主派が大勝した区議会選挙翌年の20年、香港国家安全条例が制定され、政府を批判するのは難しくなった。区議会の選挙制度改革案は23年5月2日に提出され、7月6日に立法会を通過。立候補者については、政府がメンバーを任命する「地区委員会」、「地区撲滅罪行委員会」、「地区防火委員会」という3つの委員会のメンバーから最少3人の推薦などが必要となった。
推薦が集まっても、資格審査委員会が出馬の可否を判断するため、政府の一存で立候補できるかどうか決まる。事実上、民主派の立候補は不可能となったが、それでも民主派は諦めずに立候補者を擁立するべく努力したものの、必要な委員会メンバーから推薦の数を集められず、立候補の届け出を断念。民主派の立候補者はゼロとなり政府の思惑通りとなった。
区議会選の前の21年にも、親中派有利の選挙制度改革が行われ、同年12月19日の立法会選での投票率は過去最低の30.2%まで落ち込んだ。今回の区議会選はさらに投票率が下がることが予想される。あるマスコミ関係者は「2割いったら御の字かもね」と見通す。また、筆者の友人は「誰が当選したって、政策の方向性は同じでしょ。投票に意味があるとは思えない」と投票に行く気はない。
では、支持者がいないという意志表明ができる白票はどうか。「確かにそういう考えもあると思う。ただ、白票が多くても議会に変化が訪れるわけじゃないから」と諦めを通り超えて関心がない。なお、香港では、白票を呼びかけることは違法行為となっている。
その一方で、市民はどの候補者が最少の投票数で当選するのかには関心が集まっている。これは、12年の行政長官選挙で梁振英氏がわずか689票で当選したことが背景にある。
当時の行政長官選挙は約1200人の選挙委員会のメンバーが票する間接選挙だったため、「民意を反映していない」「わずか689票で香港のトップに立った」と揶揄された。確かに最少得票数はSNSなどのネタにはぴったりだろう。