2024年5月3日(金)

WEDGE REPORT

2023年8月18日

 香港は金融と物流の世界的ハブという都市機能から中国の玄関口の役割を担ってきた。さまざまな米中対立によるデカップリング論議と香港国家安全維持法(国安法)の影響により、世界の企業は香港をどう評価すべきなのか意見が真っ二つに分かれている。

100万ドルの夜景は香港経済繁栄の象徴だが、陰りが出る可能性も出てきている(筆者撮影)

懸念高まる人材の量と質の問題

 人口減少は国力を恐ろしく削ぐことを、日本人は少子化を通じて痛感している。2020年に国安法が制定された香港は、政治的な状況に不安を感じた香港人が離港し、22年末の人口は約733万人と3年連続減少した。人口減少による人材不足は日本と似たような状況で、あらゆる業界に影響を及ぼしてきた。

 香港でIT企業を経営する人は「業界として人材不足な上に、香港の人口が減って完全な売り手市場。給与を3割以上上げても採用できないときがあった」とぼやくような口ぶりで語ってくれた。

 しかし、香港政府統計処は8月15日、香港の人口は23年半ばの時点で約750万人に回復したと発表した。この数字は人口減少が始まる前の逃亡犯条例に関する反対するデモが起きた19年の人口規模に匹敵する。香港政府は「新型コロナウイルス禍の時に香港を出た人が戻ってきたことと、中国本土と海外から滞在許可を取得した人が増えた」と分析している。

 ただ、「数字上、人口は増えたかもしれないけど、魅力的なオファーを出せる企業から解消していくだろうから、すぐに人手不足がなくなるとは思えない」と小売店を経営するオーナーは推測する。

 今後、人材不足問題が解消に向かったとしても、人材の質の問題が残る。学校で教えた内容が結果的に国安法違反になることを恐れ、辞職した教師がここ数年、続出したからだ。それは、将来の教育水準に疑義が出ることにつながる。


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