2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2023年8月18日

進出する企業もある

 その一方で、香港市場および中国市場へいまだ食指を動かす外資系企業もある。中国市場を魅力的と感じる場合、香港は依然として中国への玄関口となる。

 米シティバンクは香港ですでに1000人以上を採用したほか、スイス金融大手UBSは200人、英金融大手HSBCもコロナ真っ只中の21年に増員計画を発表している。香港をテコに中国ビジネスを視野に入れた動きだ。

 日系企業で言えば、ドン・キホーテやスシローは19年のデモが行われているときに香港初出店し、成功を収めている。また、マツモトキヨシも22年に1号店をオープンさせ、事業を拡大中だ。

 これら3社は、香港人が日本を訪れた時に行ったことのあるなじみの店なので、彼らにとって香港進出は世界展開する上で自然な選択だった。

レッドラインはどこにあるのか?

 中国は総人口をインドに抜かれたものの、依然として14億人を抱える巨大市場だ。全人口の10%でさえ日本の人口を上回る。

 経営者として企業の成長を考えるならば、巨大市場を無視することは非常に難しい。大きな収益が見込めるほか、もし自分の会社が中国に進出せず、ライバル企業が進出して中国で大稼ぎした場合、自社は他国で稼いだとしても、最終的な売上高などで後塵を拝するかもしれない。その先の投資額でも見劣りした場合、気づけばライバル企業に大きく差を付けられる可能性もある。まして、少子化で経済が停滞している日本の実情を考えると「成長>イデオロギー」にならざるを得ない。

 また、英語が依然として香港で公用語であることも、実は見逃せない点だ。英語圏に身を置くとわかるが、それ以外の言語とは比べ物にならないほど情報量を取得できる。世界の共通語というのは大きなアドバンテージがある。

 ただ、「1人の日本国民としてイデオロギーが異なる中国でビジネスをするべきではない」という意見は頭に入れておくべきだろう。ここに、中国本土の反スパイ法、香港の国安法という政治リスクも加わる。

 要は、経営層がイデオロギーと政治リスクのレッドラインをどこに引くかによって、香港の評価は分かれるということだが、国安法や反スパイ法は違法基準が不明瞭なため、このラインが見えにくい。同様の活動を行っていたとしても、ある日突然に摘発されることもあり得る。

 それは、経営者にとって悩ましい問題を抱える続けることになる。巨大な市場である中国およびその玄関口である香港でビジネスをするということは、中長期的にリスクや懸案事項を抱え続けることになることを十分に考慮しなければいけない状況になっている。

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