2024年12月10日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年6月16日

 中国の2023年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は、前年同期比4.5%と好調を取り戻したかに見えたが、4月以降は息切れの様相を示している。この背景には、政府当局が追加の経済対策を示しておらず、第14次5カ年計画において「双循環」(二重循環)戦略を公式戦略として以降、国内循環重視(国際循環軽視)のスタンスを変えていないことがあると考えられる。本稿では、中国経済の今後について、国際経済やグローバリゼーションとの関連についても意識しつつ分析してみたい。

(Marcos Silva/gettyimages)

息切れする中国経済

 直近の中国経済の現状を整理しておこう。1~4月の一定規模以上の工業企業の生産増加額は対前年同期比3.6%増、4月対前年同月比で5.6%増だったが、対前月比では0.47%減であった。

 また、1~4月の社会商品小売総額は対前年同期比8.5%増、ネット上の商品小売額は12.3%増と好調で、前者は4月対前年同月比18.4%増だったが、対前月比では0.49%増にとどまっている。対前月比の数字が示すように、生産と消費にはすでに息切れの徴候が表れている。

 投資の状況を見ると、1~4月の全国固定資産投資は対前年同期比4.8%増と1~3月期より増加速度が0.4%減速しており、4月対前年同月比では0.64%減となった。うち民間固定資産投資に限ると、1~4月の対前年同期比で0.4%増とほとんど増えていない。

 投資を牽引する主役が見当たらない。関連産業を含めるとGDPのほぼ3割を占める不動産業の1~4月投資は、対前年同期比6.2%減(うち住宅4.9%減、オフィスビル9.2%減)で不振が続いている。

鈍化する家計と企業の動向

 いわゆる「リベンジ消費」が期待されている家計だが、中国人民銀行の家計アンケート調査(四半期ごとに実施)を見ると、「今後、貯蓄を増やすか、投資を増やすか、消費を増やすか」との設問に対し、「貯蓄を増やす」と回答する比率が2022年第2四半期以降58.3%→58.1%→61.8%→58.0%と高止まっており、貯蓄志向が依然強いことがわかる。


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