2024年11月25日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年6月16日

 また、都市部調査失業率は4月に5.2%と落ち着いているが、16~24歳に限ると20.4%と過去最悪であった。若年層の就業の受け皿となってきたサービス業の不振が背景にあると考えられるが、消費意欲の高い若年世代の高失業率は消費を下押しすることは間違いないところである。

 企業の景況感も悪化している。製造業と非製造業の購買担当者景気指数(PMI)を見ると、製造業は4月49.2、5月48.8と2カ月連続50以下(50は中立、を示す)であった。非製造業は4月56.4、5月54.5と50は超えているものの3月の58.2から下げ続けている。

 景気のバロメーターである株価を見ると、上海株は5月に4カ月ぶりの安値圏に入っており、海外投資家の多い香港株は年初来10%下げている。投資家も中国経済の先行きを不安視していると思われる。

混乱する国際経済秩序とその影響

 国際経済の動向を見ると、米中摩擦が継続・激化する中、技術分野でのデカップリングが進行している。特に2022年10月に米国が導入した先端半導体の輸出規制は、それ以前に比べて格段に厳しい内容で、オランダや日本など半導体製造装置に優位性を持つ諸国をも巻き込んで混乱を広げている。中国は、先端半導体の供給が絶たれるなどサプライチェーンが混乱し、その再編を余儀なくされている。

 ウクライナ戦争の悪影響も継続している。食糧、エネルギー価格などは一時の高騰から落ち着きを取り戻しているが、国際物流の混乱は収まっておらず、半導体など重要部品調達の困難は解決されていない。

 対外貿易の状況を見ると、輸出・輸入とも伸びが鈍っている。1~4月の輸出(ドルベース、以下同)は前年同期比2.5%と微増、輸入は7.3%減であった。

 同期の輸出入総額は1.9%減であったが、対欧州連合(EU)は3.5%減、対米国11.2%減、対日本9.6%減と減少幅が大きくなっている。製品別にみると、輸出総額ベースで電器・機械の増加が2.4%増と総額増加率よりやや小さく、ハイテク製品13.4%減となっている。

 ただし、こうした変化がデカップリングの影響によるものかどうかを判断することは難しい。まずは、当該国・地域の景気減速の影響が大きかったものとみておくべきであろう。

 国際経済分野からの影響でもう一つ注意しておくべきは、中国の対外貸付が焦げ付くリスクである。特に新型コロナウイルス感染症流行とウクライナ戦争を機に、中国が多額の貸付を行っている新興国経済が落ち込み、問題債権が急増している。

 報道によれば20~22年における不良債権は768億ドルと17~19年の4.5倍に達したとされる。中国の外貨準備高は3兆2000億ドル超(4月末)あるとはいえ、新興国向け問題債権の増加は、「一帯一路」遂行の障害となるだけでなく、中国の対外経済ポジションを不安定化させるものである。


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