香港の選挙運動
実際の選挙の様子はどのような感じか街を歩いてみた。立候補者のポスターは、店の壁などに貼られている。日本は指定された掲示板にポスターを貼るが、香港にはそういったものはないため、候補者の関係者が店などに頼んでポスターを貼るほか、横断幕や旗を作ってガードレールに掲げたりするパターンも多い。
また支持者が鉄道駅出入口など、人が集まるところでビラ配りをしているのは日本と同じ。候補者はあちこち辻立ちをして有権者に政策を訴える。
演説ができない場合は、録音テープをボランティアらに託し、地下鉄駅出入口でスピーカーを使ってひたすら流す。ただ、日本のように選挙カーで大音量の「ありがとうございます」の連呼はない。
市民レベルでは選挙への興味を失われているが、候補者は親中派であっても落選すれば「ただの人」。政策的にどんぐりの背比べだが関係者は当選に向けて必死だ。まして最少得票で当選は絶対に避けたい。
市民がビラを受け取るのか観察してみたが、もらう人はほとんどいない。
市民は選挙ではなく、休暇へ
区議会選挙投開票日の翌11日は基本的に全学校が休校となる。投票は22時半までだが、投票所となる一部の学校は翌日までに原状回復して戻すことができない可能性があるためで、20年に教育局(Education Bureau)がこの方針を打ち出した。
旅慣れている香港人は3日あれば海外旅行に行こうとする。そう月曜日に有給休暇を取り、2泊3日の小旅行を計画した人もいるのだ。
渡航先としては、中国本土に訪れる人が最も多いと予想されている。実は、陸路で気軽に行ける深圳へ出かける香港人が増加中で、香港では重陽節(子孫繁栄や不老長寿を祈る)で3連休となった10月21日から23日に、香港を出境した人は約111万人に上った。中国から香港に入境した人は約25万人で、約4倍だ。
理由は、物価の安い深圳で買い物、マッサージ、食事などを楽しむためだ。コロナ禍で香港が鎖国したことから、3年間市民は狭い香港内にとどまった。コロナ禍でも一応、国内旅行が出来た日本人とは大きく異なる。
知人は「やっと香港を出られるようになったので日ごろのストレスを発散したい。先日、深圳の中華料理店で食事したら、香港より4割は安かった」と話す。「安い日本」に外国人観光客が来日するのと同じ構図だ。