2024年7月17日(水)

Wedge REPORT

2024年7月17日

 近頃、やたらと葬儀や墓地の広告が増えた気がする。さらに「終活」支援ビジネスも盛んなようだ。高齢化社会で死者も増えたため、葬儀や墓の需要も高まったのだろうか。

熊本県産山村の正信教会の樹木葬墓地。墓標を石ではなく樹木にした墓地が増えている(筆者撮影、以下同)

 とくに墓地の案内の中で目が止まるのは、樹木葬である。墓標を一般的な石ではなく、樹木にしたものだ。既存の墓地の一角に樹木葬スペースを設けるところも増えてきた。「豊かな自然の中に眠る」「花々と緑豊かな環境」などを売り物にしている。樹木葬と呼ばず、桜葬、樹林墓地など別の名で展開しているところも少なくない。

 実際に人気らしく、新規墓地契約者数は樹木葬が半数を占めたという霊園業界の統計もある。もはや樹木葬は、墓地の主流になりつつあるのだろう。

 そんな業界の裏事情をかいま見たい。同時に世界的な葬儀や墓地の潮流についても目を向けると、墓地と環境、そして人々の意識の変化が浮かび上がってくる。

時代の流れによって変わる葬儀や墓の形

 まず墓地は日本中にどのくらいあるのだろうか。厚生労働省の統計では、全国に約87万3441カ所。ただ広さは千差万別なので総面積がはっきりつかめない。概算で23万ヘクタール以上と思われるが、これは東京都の面積をはるかに超える。

 寺などに付属するものはともかく、近年の墓地は、山林を大規模に切り開いて造成されることも多い。100ヘクタールを超える巨大墓地も生まれている。一方で納骨堂も増えており、約1万2400カ所ある。

 現代の日本では、年間約130万人が亡くなる。しかし、葬儀や墓地の需要はそれに比して伸びていない。また既存の墓地も継承者がわからなくなり、管理費も支払われないなど墓地経営が立ち行かなくなってきたところも現れている。今後継承者の減少から3代を重ねると約半数が無縁墓になるという研究結果が出ていた。


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