2024年12月7日(土)

世界の記述

2023年9月13日

 2024年1月の台湾総統選挙の各種世論調査で、与党民進党の候補で副総統の頼清徳氏が独走状態を続けている。台湾のネットメディア、美麗島電子報が9月5日から7日に行った世論調査で、頼氏の支持率は38.8%で、最大野党、国民党候補で前新北市長の侯友宜氏は21%、第2野党、民衆党候補で前台北市長の柯文哲氏は18.4%と他を引き離す。若年層の人気が高かった柯氏は、同じメディアの世論調査で当初は25%を超えていたところから低落傾向が止まらず、今回は前回に続いて侯氏にリードを許した。

頼清徳候補(右)と立法委員候補のツーショット(9月1日、新北市板橋区、筆者撮影)

 8月末に無所属での立候補を表明した、電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手の鴻海精密工業(ホンハイ)創業者、郭台銘(テリー・ゴー)氏は9.4%で最下位。郭氏は9月初め同社の役員を辞任して、総統選挙に専念している。ただ、国民党の侯氏支持を表明していたため同党から「背信行為」との批判も出ている。

訪米も多数が肯定

 8月末ごろから各社の世論調査で潮目が変わり、頼氏が台湾のネットスラングでいう「天井板を上抜けた」状態になった。世論調査で長い間、支持率が動かなかった頼氏が「天井板」の35%を一挙に超えて4割かそれ以上に急伸し、他の2候補は合わせても及ばないほどの差となった。

 世論調査機関の台湾民意基金会が8月21日に発表した総統候補の支持率は、頼氏が43.4%、柯氏が26.6%、侯氏が13.6%。同会のそれまでの世論調査の中で、頼氏の支持率は過去最高。前回20年の総統選挙を前にした、19年8月時点の蔡英文総統の支持率を2ポイント上回った。

 同会は「2024年の台湾総統選挙は新しい局面を迎えた」と指摘。それまでの3候補鼎立(ていりつ)から「一強、一中、一弱」の構造に変化したとの見方を示した。美麗島電子報の9月の調査結果をみると、既に「一強、二~三弱」になっている。

 また、支持層の内訳にも変化が出ている。同基金会の8月の調査結果では、柯氏が40歳以下の層だと支持率をダントツの1位。40歳以上では頼氏が優勢、侯氏は55歳以上で2位につけた。

 ただ、前回の調査と比べると、頼氏が各年齢層で支持を拡大したが、柯氏が優勢な支持層は45歳以下から40歳以下へとさらに若年化した。侯氏は全年齢層で支持を減らし、特に20~24歳の層では全滅状態となった。

 8月に頼氏の支持が急伸したのは、同月行われた訪米とその前後の発言が評価されたためとみられる。頼氏は南米パラグアイの新大統領就任式出席のため台湾を出発。8月12日に往路の「経由地」として米ニューヨークに到着。16日には、復路の「経由地」として米サンフランシスコを訪れた。

 ネットメディアの太報によれば、頼氏の8月の南米と米国訪問は、表向きは非常に地味な動きとなった。実際には、非公開で米政府高官や米連邦議会の上下両院議員と会談したもようだ。パラグアイの大統領就任式ではハーランド米内務長官と懇談し写真撮影も行った。


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