2024年12月22日(日)

世界の記述

2023年7月18日

 シンガポールのリー・シェンロン首相は今年4月、同国の国会で、米中の緊張が高まる中、最も危ない発火点は台湾だと指摘した。米中衝突は台湾周辺でいつでも起こりうる。中でも南シナ海に浮かぶ小さな東沙諸島が、特に危険な火薬庫になる恐れがある。

台湾も海軍初の排水量1万トン級の大型新型揚陸艦「玉山」を就役し、離島防衛を強化する(写真は22年9月の引き渡し式、ロイター/アフロ)

 東沙諸島は台湾の高雄市が管轄し、台湾本島からの距離は約480キロメートル。東にバシー海峡、西に中国・海南島。香港から310キロメートルと近く、広東や香港に向かう船にとって玄関口に位置する。

 最大の東沙島(プラタス島)は面積1.79平方キロメートル、海抜は最高7.8メートルの平らな島。青い海に浮かぶサンゴ砂の白い孤島は、美しさと裏腹にきな臭さに包まれている。

東沙諸島周辺で米中あわや衝突か

 香港の英字紙、サウスチャイナ・モーニングポストが今年5月、東沙諸島周辺で米軍と中国軍が衝突しそうになる事態が起きたと報じ、世界の耳目を集めた。

 同紙が中国軍の研究チームの情報として伝えるところでは、事態の発生は2021年1月5日。米首都ワシントンで、トランプ前大統領の支持派が、米連邦議会議事堂に乱入した事件の前日という微妙な日だった。

 米軍機3機が中国軍潜水艦を追って、香港からわずか150キロメートル沖に飛来し、演習のため周辺海域に展開していた中国海軍の艦隊が即座に対応したという。ただ、中国海軍部隊の規模などは明らかにされていない。

 米軍機は、東沙諸島周辺の海域に潜水艦探知用のソナーを設置した。米軍はしばしば南シナ海で「航行の自由」作戦を展開している。ただ、東沙諸島の領有権を主張しているのは中国と台湾のみで、米軍機の動きは中国側を刺激した。両者がにらみ合う中、米軍側は、ソナーを中国の手に渡さないため自ら破壊したという。


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