台湾の最新揚陸艦が就役
台湾自身も離島防衛に力を入れている。台湾の軍事新聞通信社によると、台湾海軍初の排水量1万トン級の大型の新型揚陸艦「玉山」が6月に就役し、高雄・左営軍港の水星岸壁で記念式典が行われた。平時には離島守備部隊への人員や物資の輸送のほか、災害救助などに使用。戦時には水陸両用部隊に編入され、中国軍が離島を侵攻した時の奪還作戦などに従事する。
「玉山」は、全長153メートル、全服幅23メートル、満水排水量1万0600トン。最高速度20ノット。補助艦艇でありながら重武装で、国産の対空ミサイル「海剣二」を最大32本、近接防御火器システム2基、「Mk75」機関砲 1門、ヘリコプター2機を搭載している。新鋭艦として、ステルス性能と電磁パルス防御性能を持たせる処理も行われている。
ドック型揚陸艦(LPD) に分類され、水陸両用兵員輸送車のAAV7や小型揚陸艇を格納できる。戦時には、海兵隊員200人のほか、対艦ミサイル発射車を搭載した汎用揚陸艦を離島などに迅速に投入できる。
台湾海軍のドック型揚陸艦は、12年以降、老朽化した「旭海」1隻のみ。台湾海軍は16年から取り組んでいた、新型LPD2隻を保有する「鴻運計画」の一部がようやく実現した。
揚陸艦「玉山」が昨年9月、海軍に引き渡された際の式典には、蔡英文総統も出席。「中国の軍事的脅威には、自主的な防衛力を強化してこそ、本当の平和が得られる」と述べて、同艦の完成を喜んだ。
本島だけでない「台湾有事」
東沙島には既に40年も前に、強固な陣地が構築済みだ。台湾紙の自由時報によると、1980年代に当時の郝柏村参謀総長(後に行政院長=首相=に就任)の命令で、東沙島に立体的で坑道を巡らせた地下防御陣地を構築した。砂以外のセメントなどの材料を本島から送り込み、将兵一丸の突貫工事で完成させた。
郝参謀総長は、日中戦争、国共内戦を戦い、1958年に中国と金門島の間で起きた中国人民解放軍との激烈な砲撃戦「八二三砲戦」を経験している。建設中の東沙島の陣地を視察し、計画が不十分であることを痛感。当時の東沙守備隊長に、工兵連隊長を伴わせて金門島の陣地を徹底的に見学させてから工事に当たらせたとの逸話が残る。
東沙島の陣地は現在も健在で、約500人の海兵隊員が守備している。しかし、西村氏は「平坦地だと、いくらコンクリートで陣地を構築しても、中国軍が上陸すればすぐにやられてしまう」と語る。ただ、フィリピンの米軍基地と連携し、周辺の海上と航空の優勢が保たれていれば、東沙諸島の攻略は容易でないという。
「台湾有事は日本の有事」としばしば言われる。東沙諸島の重要性を考えると、この場合の「台湾」が、本島だけに限られないことは間違いない。