2024年12月21日(土)

デジタル時代の経営・安全保障学

2023年7月5日

 在沖縄米軍人向けの沖縄最古の英語情報誌「This Week on OKINAWA」の6月4日号が、沖縄近海の海底に敷設されている光海底ケーブルから中国製盗聴装置が発見されたことを報じている。

(Vadym Plysiuk/gettyimages)

 沖縄には現在、NTT、au、KDDI、AT&Tおよび米軍による光海底ケーブルが敷設されており、日本本土、アジア各国、グアム、ハワイ、豪州へと結ばれている。大手通信会社の技術者の話によると、約5年前に沖縄近海の光海底ケーブルに中国製の盗聴器が取り付けられているのが発見されたという。総務省の元幹部は「当時は、通信局に所属していなかったので、盗聴器の映像は見ていない」と断わった上で「海底ケーブルに盗聴器が取り付けられていることは知っていた。そして、それは1回だけではなかった」と述べたという。

 「This Week on OKINAWA」は1955年6月に月刊誌として創刊され、61年2月に週刊化された歴史ある雑誌である。この報道では、どの海底ケーブルに盗聴器が仕掛けられていたかは不明だが、一度ならず、複数回発見されていることを考えれば、すべての海底ケーブルに盗聴器が仕掛けられていた可能性は排除できない。台湾有事が懸念される現状では、光海底ケーブルの盗聴にますますの警戒が必要だろう。

意外と簡単な光海底ケーブルの盗聴

 光ケーブルの盗聴は、意外といっていいほど簡単にできる。2011年には「光ファイバーの盗聴:その方法と注意点(Optical fiber tapping: Methods and precautions)」(Zafar M. Iqbal/Habib Fathallah/Nezih Belhadj著)という論文が発表されている。また、13年にはエドワード・スノーデンが、英国政府通信本部(GCHQ)の光ケーブルの盗聴の実態やニュージーランドの政府通信保安局(GCSB)が光海底ケーブル「サザンクロス」の盗聴を行っていたことを暴露している。

 YouTubeには「Hacking Fiber Optics」や「Live Fiber Tapping」、「Monitoring Fiber Optic Connections」などの沢山の実演動画を見ることができる。

 盗聴に必要な装置は、通販サイトで300ドルから500ドル前後で手に入れることができる。盗聴器そのものは片手の手のひらに収まるほど小さなもので、大半はロシア製だ。

 盗聴器の穴に光ファイバーをほんの少し曲げた状態で蓋をすれば、準備完了だ。光ケーブルを切断したり、どこかにケーブルを接続する必要もないので、通信が途絶えることがないため、事業者に気づかれることもなく盗聴できるのだ。もちろんこれらの動画は陸上での盗聴例だが、海底でも原理は同じだ。


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