位置はすでに捕捉されている
光海底ケーブルの陸揚げ拠点は、なだらかな海底が沖まで続く、遠浅の地形が選ばれる。そうした地形でなければ、海流の影響でケーブルが切断されてしまうのだ。
したがって、海底ケーブルの陸揚げ拠点は、おのずと限られることから沢山の通信事業者の海底ケーブルが集中することになる。秘匿されている軍用のケーブルであってもその位置が特定されるのだ。
中国の場合は、海洋調査船という名の海底調査専門の船が海底ケーブルの位置についても徹底的に調べあげている。中国の海底調査船は陰の軍隊と呼ばれており、軍用の光海底ケーブルの位置も把握しているはずだ。中国人民解放軍は海底ケーブルを切断するための水中ドローンをすでに実践配備している。
光海底ケーブルの場合は、光の減衰を防ぐため、約80キロメートル毎に増幅器が設置されており、ここに盗聴器を仕掛けられる。したがって、陸上の陸揚げ局から、沖合80キロメートルにある最初の増幅器が最も狙われやすいということになる。
増幅器では、まとまった144本の光ケーブルが1本、1本バラバラに増幅されているため、盗聴器を仕掛けやすい上に、ケーブルから増幅器へ供給する電源まであり、盗聴器の電源も容易に確保できるメリットもあるのだ。
光海底ケーブルの最大の弱点が増幅器となる。事実、見つかったとされる中国製の盗聴器も増幅器に取り付けられていたという。
光海底ケーブルに盗聴器を仕掛ける作業は、潜水艦などを使って行われる。米軍の場合は、原子力潜水艦ジミー・カーターが有名だ。
ジミー・カーターの船底には、ダイバーが海底で作業しやすいよう、簡単に船内と船外を行き来できる装置が搭載されているといわれている。盗聴器から発せられる電波も潜水艦で受信して情報収集されるものと思われるが、最近では水中ドローンが開発されており、情報収集も民間船舶でも容易にできるようだ。
記事では、「日本の大手通信会社の技術者は『増幅装置から漏れる電磁波を盗聴して情報を解析している』と指摘した上で『実際、総務省の窓口で見せてもらった写真には、増幅装置に取り付けられた小型のセンサーが写っていた。』と述べている」と伝えている。総務省は、盗聴したデータの収集方法についても分析するなどの調査を行ったのだろうか。
総務省の対応は適切だったのか
大手通信会社の技術者は「総務省の担当官から海底ケーブルに設置された中国製盗聴器の写真を見せられ、海底ケーブルの点検を強化するように言われた」という。
自民党の情報通信戦略調査会は4月15日に「情報通信インフラの強化に向けた緊急提言」と題する報告書をまとめているが、「国際海底ケーブルや陸揚局の安全対策」としては、「事業者の安全対策だけでは対処が困難な水中ドローン等による海底ケーブルの切断や陸揚局に対するテロ等の脅威に対応するため、事業者と総務省、警察庁、海上保安庁等が適切に連携できる体制の構築、陸揚局の周辺土地等の利用規制の検討、国際海底ケーブルの断線等に備えた多ルート化や敷設船・修理船の整備・更改への支援などに取り組むことが必要である」ともっぱら海底ケーブルの断線に備えた対策強化に終始し、「盗聴」には触れられていない。また、情報連携に関しても「事業者と総務省、警察庁、海上保安庁等が適切に連携できる体制の構築」とだけ記載されており、防衛省は出てこない。