2023年9月24日(日)

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2023年6月26日

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河村和徳 (かわむらかずのり)

東北大学大学院情報科学研究科准教授

慶應義塾大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士課程単位取得退学。専門は政治学。金沢大学法学部助教授などを経て現職。著書に『電子投票と日本の選挙ガバナンス』(慶應義塾大学出版会)など多数。都道府県議会デジタル化専門委員会座長を務める。

 新型コロナウイルス感染症が世界的に感染拡大したこの3年間、われわれの日常は大きく制約された。いかに感染拡大を抑えるかが政治的な重要案件になり、情報通信技術(ICT)を活用することによって三密(密閉・密集・密接)を回避し、できる限り日常を維持する取り組みが試みられた。

(fizkes/gettyimages)

 企業では広がりに欠いていたテレワークが普及し、教育面ではオンライン授業が実施された。行政などは回線のセキュリティなどの観点からテレワークを行う公務員は極めて限定的にとどまったが、オンライン申請など住民が役所に足を運ばなくてもよい環境づくりに手を付けようという動きが見受けられた。

 土地に縛られ、密な空間で運用されていた選挙制度や議会制度といった民主主義を支える制度も対応を余儀なくされた。コロナ禍でも中央政府・地方政府の意思決定環境を維持するため、オンライン会議環境を積極的に整備する動きは世界的に見られた。

 ただし、地方議会の意思決定にICTを活用しようとする動きは国によって大きく異なる。韓国のように地方議会がパンデミック発生から間を置かずオンライン会議環境を整備したような国もあれば (河村和徳「デジタルの光と影ー韓国地方議会施設で得られた知見から」『地方議会人』2023年2月号、8-11頁)、わが国のようにオンライン技術の活用が乏しい国もある。

 図表1は、筆者が2022年に全国の市区町村議会事務局を対象に実施した地方議会のあり方とデジタル化に関するアンケート調査 の結果を示したものである。コロナ禍において、市区町村議会でオンライン技術を活用したところは少数派である。市区町村レベルではハードが導入されないだけではなく、委員会をオンラインで実施するための条例改正が進まないという足かせもあるようである 。

なぜ地方議会のデジタル化が必要か

 オンライン会議だけが地方議会のデジタル化ではない。大規模自然災害の被災直後やパンデミックの状況では議場に議員が参集できない状況が生じる。危機下であっても、できる限り住民の声を地方自治体の意思決定に反映するために、デジタル技術を用いるのである。

 行政のデジタル・トランスフォーメンション(DX)が進む中、地方議会もそれに歩調をあわせてペーパーレス化などを通じ、議会にかかるコストの見直しに資することも目的となる。議会資料のオープンデータ化・オープンドキュメント化は議会活動の監視コストの低減にも資する。


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