2024年6月24日(月)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年3月26日

(イラスト・マグマジャイアンツ)

 1月下旬の土曜日、小誌記者は群馬県富岡市の一ノ宮地区を訪ねた。

 住民基本台帳から無作為で抽出、つまり〝くじ引き〟で選ばれた住民が、地域の課題について話し合う「第4回一ノ宮地区円卓会議(自分ごと化会議)」に出席するためである。

 会場では老若男女の住民約30人が6つのグループに分かれて「地域づくりの担い手不足」をテーマにさまざまな意見を出し合い、活気に満ちていた。

「そもそも地域の役員がどんな仕事をしているか分からないので、マニュアルを作成して『見える化』することが必要だと思います」

「マニュアルを作るなら『それってどういう意味?』と素朴な疑問を持つ小中学生に協力してもらえれば、みんなが分かりやすい資料になるのでは?」

「役員がどんなことをしているのか、SNSなどを使ってもっと情報発信すべき。回覧板以外にも発信手段はあるはずです」

〝くじ引き〟によって選ばれた参加者だから当然、年齢や職業、役員経験の有無などは一様ではない。世代を超え、各々が生活する中での「実感」を基に、課題と向き合うのである。「誰が・どのような役割を担うのがいいか」「いつからできそうか」「自分には何ができるか」など議論の中身は少しずつ具体化していった。

 富岡高校の女子生徒に感想を聞いてみると、「普段あまり考えないテーマだったので、地域の実態を知る良い機会になると思い参加しました。グループで一番年下だったこともあって最初は緊張でガチガチでしたが、回を追うごとにそれもなくなって最後は自分の言葉で意見を言えました」と笑顔を浮かべた。

 富岡市では4年前からこの取り組みを開始。参加者の抽出やテーマの決定は主催する市が行い、若手職員も各グループのファシリテーターを担う。会議の運営をサポートするのが政策シンクタンクの構想日本だ。会場に派遣されたスタッフが全体の進行管理や議論の論点整理などを行う。全5回にわたる会議の終了後、住民たち自身で話し合った内容を提言にまとめ、実際のアクションにつなげていく。

 構想日本の田中俊プロジェクトマネージャーは「住民たちは意見を表明する機会がないだけで、必ず自分なりの意見を持っています。これは、どの地域に出向いても実感します。重要なのは意見を否定せずに受け入れ、フラットに話し合える〝場〟をつくることだと思います」と話す。

 この思いは参加者にも届いているようだ。最後のまとめで30代の男性は会場にいる参加者に向けてこう言った。

「地区、町、市、県と範囲が広がれば広がるほど、自分にとって身近ではなくなってしまう。だから、『誰かがやってくれる』という感覚になるのだと思います。地域のことを真剣に考えて今の仕組みを変えるなら、その当事者として住民同士が膝を突き合わせて話し合える、こういう全員参加型の会議がもっとあっていいと感じました」

1月下旬にもかかわらず、群馬県富岡市で開催された一ノ宮地区円卓会議(自分ごと化会議)の会場には熱気が漂っていた

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