2024年4月21日(日)

Wedge REPORT

2023年6月26日

 地方議会をオンライン参加できるということは、妊娠中の女性議員や家族の介護をしなければならない地方議員がより参加しやすくなることにつながる。また、オンライン技術の活用は遠方に住む有識者へのヒアリングを容易にし、議員が接触できる住民の多様性につながる。オンライン技術をはじめとするICTの活用は、明治以来の地方議会のあり方を変える、「地方議会のDX」につながるのである。

 第33次地方制度調査会も、22年12月28日の「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」において、「国会における取扱いの状況も参考としつつ」と留保はあるものの、オンライン活用が危機に強い議会の構築につながると述べつつ、多様な人材の議会への参画に途を開くためにも丁寧に検討を進めていくべきと強調している。地制調は地方議会のデジタル化の意義をうたうものの、地方議会それぞれが自ら置かれている状況に即してデジタル化を進めることが望ましいという立場のように読める。

 地方自治体がさまざまな社会実験を行い、そうした中で得られたグッド・プラクティスを、他の自治体が真似たり、国が全国展開したりする。これは地方分権の大きな意義の一つであることは間違いない。

地方議会のデジタル化推進の盲点

 ただし、地方議会がそれぞれベンダーと契約し、デジタル化を進めていくことには二つの盲点がある。

 一つは、海外製のアプリを地方自治体の意思決定に積極的に用いてよいのか、という経済安全保障的な視点である。例えば、先進事例として紹介される地方議会で用いられているビデオ会議アプリは、海外製がほとんどである。

 広く普及している海外製アプリを利用することは会議にかかるコストを抑制する利点があり、すでに利用している人も多いので使い勝手がよい面もある。しかし、地方議会は地方自治体の意思決定機関であり、人権問題など機微な情報を取り扱う場合もしばしばある。このような場合、地方自治法の第115条に基づいて公開が原則の会議を非公開で行う「秘密会」を海外製アプリで行うことは妥当なのだろうか。

 もう一つは、地方自治体にベンダーから提供される情報システムの所管のあいまいさである。23年3月以降、コンビニの証明書交付サービスを利用して住民票の写しを取得しようとしたら他人のものがコピー機から出てきたというニュースを見聞きした読者は多いだろう。

 行政に関するトラブルが生じた場合、所管する省庁が指導に入るのが一般的であるが、この案件では、根拠法がないため、総務省やデジタル庁からベンダーを直接指導することはできないと思われる。同様に考えると、地方議会のデジタル化は、議会それぞれの自主的な取り組みであり、トラブルが生じた際、総務省やデジタル庁による指導にはあまり期待できないということになる。

 筆者が思うに、民主的な意思決定において生じた技術的トラブルは、後を引く可能性が高い。その象徴が電子投票である。

 日本では、地方選挙レベルで電子投票システムを使うことができる。しかし、23年現在、電子投票を行う自治体はない。制度的にも技術的にも実装可能にもかかわらず、広がりに欠く状況にある。


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