「情報」は、時には一国の運命を左右する重要なインフラである。5年前の2018年当時、このニュースが広く報道されていれば、海底ケーブルの安全対策は、盗聴の防止も含め、今よりももっと早く、政策として実行されていたのではないかと思うと歯痒い。総務省は、光海底ケーブルの盗聴という行為を軽く見ていたのか、防衛省との情報連携はできていたのか気になる。
盗聴防止も民間まかせの海底ケーブル
海底ケーブルの保守は、NECやNTTワールドエンジニアリングマリン、KDDIケーブルシップといった会社が24時間365日体制で行っているが、総務省は、盗聴防止についても民間企業の役割と割り切っていた節がある。英国では、21年3月に海底ケーブルは重要国家インフラであると位置付け、海底ケーブルを守るため、24年に海洋監視船を就役させるとし建造を指示している。
この海洋巡視船には、高度なセンサーと自律型海底ドローンが搭載され、海底ケーブルおよびエネルギー供給ケーブルの保護にあたるとしている。自立型海底ドローンは、おそらく光海底ケーブルの盗聴器を発見するための装備だろう。
いずれにせよ、英国は海底ケーブルの防護を民間の通信事業者の手に委ねるのではなく、軍が守る方針に転換したのだ。日本も英国に習って、光海底ケーブルや原子力発電所などの重要インフラに関しては、自衛隊が守ることを考えるべきだろう。
デジタル社会を生き抜くために必要な視点を提供する連載「デジタル時代の経営・安全保障学」の記事はこちら。