郭氏は、国民党の侯友宜氏か民衆党の柯文哲氏のどちらかと組めば、勝機があるとみているとの見方がある。郭氏を総統候補、他の2氏が副総統候補となり民進党政権に挑む皮算用だ。
英BBC放送中国語版によれば、国民党の朱立倫主席は、もはや総統選ではなく、同時に行われる立法院(国会)選挙に関心が移り、勝利を目指して全力を注いでいる。民衆党は、柯文哲氏の個人商店色が強く、郭氏をトップに頂く可能性は小さいとみられる。
「一つの中国」は認めない
総統選の焦点である中台関係について、郭氏は中台が「一つの中国」を口頭で認め合ったとする「92年コンセンサス」を、民進党政権が存在自体を認めないことを強く批判。中台の緊張緩和は「一つの中国の枠組み」を基礎に、中国と直接談判する以外に方法はないと主張している。
92年コンセンサスは、民進党以外は存在を認めているが、郭氏は中国の代弁者と目さており、その主張は一層声高だ。BBCによれば、専門家は「(郭氏が代理人であることは)これまでみんなが心の中で思っていた秘密だが、最近は公然たる秘密となりつつある」と述べている。中国は郭氏の当選よりも、「一つの中国」が台湾でどのぐらいの支持を得られるかを探ることが、真の狙いという。
頼氏は9月10日、南部の高雄市で行われた選挙後援会の発足式で演説し、中台関係をめぐり一部の候補が、中国との平和協定締結を主張していると指摘し、「平和協定が役に立つなら、チベットがあのように悲惨な目に会うはずがない」と一蹴した。チベットと中国は1951年、「チベット平和解放に関する協定」に署名している。
また、別の候補が「92コンセンサス」を受け入れ、主権を引き渡して平和を達成しようとしていると批判。「主権のない平和は、ニセの平和だ。主権をなくして平和が得られるなら、香港とマカオはあのように惨めになるはずがない」と切り捨てた。
頼氏の「一つの中国」の否認は一貫しており、台湾総統選で他の3候補との最大の違いもこの一点だ。台湾の民意がにわかに親中に転じない限り、頼氏の優位もゆるぎそうにない。