2024年12月19日(木)

世界の記述

2023年9月13日

 台湾の専門家によれば、頼氏の訪問に当たって米側は今回、中国を念頭にリスクコントロールを何より重んじた。それでも頼氏に行動の自粛を求めることはなく、歓迎宴の出席やプロ野球の試合観戦は予定通り行われた。今回の訪米を通じ米政府は、一緒にリスクコントロールを行えるパートナーとして頼氏への信頼を強めたという。

台湾独立派の払しょくが奏功

 台湾の衛星放送局のTVBSは、頼氏が帰国した8月21日から24日、電話による世論調査を実施。頼副総統の今回の訪問と、ニューヨークの演説で「台湾が安全なら、世界は安全。台湾海峡が安全なら、世界は安全」と述べたことなど、米国での発言について評価を求めたところ、「満足」は37%で、「不満」の20%を大きく上回った。ただ、「分からない」も44%を占めた。

 米ブルームバーグTVとブルームバークビジネスウィーク誌は、頼氏の訪米の直前の14日、独占インタビュー番組と記事をリリースした。頼氏が台湾副総統として国際メディアの取材を受けるのは初めて。

 台湾紙の聯合報によれば、インタビューでブルームバーグ側は何回も「台湾独立」の言質を引き出そうとした。インタビュアーは「台湾人は正式な独立を求めているか。あなたはどうか」と尋ねたのに対し、頼氏は「台湾は既に独立主権国家だ。名称は中華民国で、中華人民共和国の一部ではない。改めて独立を宣言する必要はない」と答えた。

 さらに「正式な独立とはどのようなものか」と尋ねられたのに対し、頼氏は「そのようなフレームワークは存在しない」と明言。「台湾は既に主権国家だ。われわれは現状維持の努力を続けなければならない」と繰り返した。

 頼氏はこれまで、もともと独立志向の民進党内でもさらに強硬な台湾独立派と内外で目されてきた。何より中国はそのようにみている。このため頼氏は総統候補に決まってから、台湾独立派イメージの払拭に努めてきた。

 頼氏は、台湾の正式独立という「フレームワークは存在しない」と言い切ったことは、台湾でも大きく報じられ、強硬な台湾独立派からの転換したことを決定的に印象付けた。蔡英文路線を引き継ぐ現状維持宣言であり、米国と中国、何より台湾の有権者を安心させたとみられる。

頼氏批判の急先鋒は郭台銘氏

 頼氏への支持が高まる中、頼氏への批判のボルテージを上げているのが、8月28日に無所属での立候補を表明した郭台銘氏だ。同日、台湾総統府近くのビルで「主流民意大連盟」と題する記者会見を行い、「企業家が国を治める時代が到来した」とぶち上げた。郭氏は、過去7年間の民進党政権の失政を列挙して、次の総統選挙での政権交代を呼びかけた。

 ただ、美麗島電子報の最新世論調査では、民進党政権の継続を望むが34.5%で最多。国民党政権17.7%、民衆党政権の11.8%がそれに続き、無所属候補の総統就任を望む声はわずかに4.3%。台湾世論は政権交代を望んでいない。


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